キャッシュレス化ありきで物事をみるべきでない
16日に首相官邸で未来投資会議(第39回)が開催された。安倍首相はこの未来投資会議で、銀行が別の銀行へ送金する際に支払う「銀行間手数料」の引き下げに向け、具体的な検討を進めるよう麻生金融担当相に指示したとされる(16日付共同通信)。
16日の未来投資会議の基礎資料(首相官邸サイトより)によると、先進国の決済システム利用料について下記のような指摘があった。
「決済システムを利用して送金する場合、米国、英国、フランスでは、銀行口座の維持手数料が普及していることなどを背景に、銀行間手数料に相当する手数料は存在しない。一方、我が国では、銀行口座の維持手数料が普及していないこともあり、3万円以上の送金で162円、3万円未満の送金で117円の銀行間手数料がかかる。」
「キャッシュレス事業者による加盟店への売上の入金は銀行振込で行われているため、銀行間手数料が高いことが、キャッシュレス決済を普及する上での障害の1つとなっている。」
資金決済を行うためのネットワークである「全銀システム」には現在、銀行のみが参加を認められている。西村経済再生相は16日午後の記者会見で、キャッシュレス事業者が直接、全銀システムに参加できる道を開き、手数料についても合理的な水準への引き下げを図りたいとの意向を示していた。
4月21日付けのロイターは下記のように伝えていた。
「公正取引委員会は資金決済を行うための全銀システムの銀行間手数料見直しを柱とする提言を発表。40年以上にわたり据え置かれてきた手数料水準の是正を促し、新規参入による金融サービスの技術革新を加速させる狙いもありそうだ」
政府が推進しようとしているキャッシュレス化の普及について、この40年間変わっていないという銀行間手数料がひとつのネックとなっていることは確かである。ただし、これを引き下げもしくは廃止するとなれば、銀行口座の維持手数料などがその代わりに必要となる。果たしてそれを預金者がすんなりと受け入れるのか。
日銀のマイナス金利政策の影響もあり、金融機関もなかなか収益があげづらくなっている。こういった手数料収入は安定した収益源ともなっているとみられ、この見直しについては金融機関としても慎重とならざるを得ない。
欧米諸国と日本では金融を取り巻く歴史、習慣等に違いがある。欧米型に合わせるとなれば、やはり預金者にも金融機関にも抵抗があろう。古い壁は打ち破らなければならないとの見方もあるが、日本型にも良い面もあるはずであり、キャッシュレス化ありきで物事をみるべきでもないと考える。