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円安・株高進行の原動力はショートカバーか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 外為市場では2日の海外市場では、ドル円は心理的な節目とされた108円をあっさりと抜いてきた。ユーロ円も120円を抜けて121円台に上昇した。4日の東京時間の朝方にドル円は109円台を一時回復した。

 2日から3日にかけての欧米市場では、特に円がドルやユーロに対して売られるような材料が出たような気配はない。円が売られている、つまり日本が国内市場で他通貨に対して売られているわけではない。

 これはいわばリスク回避の反動の動きと説明されると思われる。新型コロナウイルス危機を受けて導入した規制が各国で徐々に解除され、経済活動が再開する中、思った以上に景気回復の度合いは早い。あまり悲観的な見方から投資を行うと損失が発生する懸念がある。つまりリスク回避を意識して円を買っていたむきが投げてきた。それがひとつの節目、ドル円では108円、ユーロ円は120円で、そこを抜けたことで、テクニカルの買い、それはオプションなども巻き込んでの、いわゆる買い戻しの動きを誘い込んで買い戻しが勢いづいているともいえる。

 なぜリスク回避で円高なのか。経常黒字とか海外資産の多さを指摘されることも多いが、少なくともそのような資産は政府だけが持っているものではないので、円高要因として確固たるものということはできない。金利差の説明も現状はむずかしい。このためリスク回避で円高との発想は、マーケット参加者が共有するコンセンサスではないかと思っている。

 株式市場も予想以上の戻し方を示している。半値戻しなら全面戻しもと、チャートの上ではありえたことかもしれないが、現状を鑑みると、おいおい、どうしてここまで上がるのかとの悲鳴も聞こえるような気がする。

 株式市場関係者がそれほど楽観的なのかといえば、それは違うと思う。特に現状のような景気に対しては総悲観のような環境下での株価高に対し株式市場参加者を含め意外感をもたれていると思う。逆張り好きな個人などの新規買いはあるかもしれないが、それ以上にどうしてここまで戻すのかといった向きがいることも確かで、そういった投資家なりがヘッジなりでショートして、その買い戻しの動きがこの上昇の原動力になっている可能性がある。

 相場の急落は買い方の投げが原動力となっていることが確かであれば、予想外の戻りは想定が狂ってしまったむきの買い戻しの動きともいえるのではなかろうか。

 これは外為市場でも同様の動きがあったのではないかと思われる。ただし、そのショートカバーが一巡すると、今度は新規の買いが入らなければ、上値を維持できなくなることも確かであろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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