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第2次補正予算に伴う国債発行の行方

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 今年度の第二次補正予算の閣議決定後、あらためて国債発行計画が発表されるが、その発表を前に市場参加者が今回の国債増発についてどのようにみているのか。財務省のサイトに22日に開催された国債市場特別参加者会合(第88回)の議事要旨から確認してみたい。

 第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更について、理財局から5月27日を目途に概算決定が予定されているとの説明があり、財投債を含めた国債の追加発行額が相応の規模となった場合を想定の上、皆様から国債発行の増額についてご意見を賜りたいとあった。

 参加者からの意見(概要)には、次のような意見があった。

 「証券会社・投資家共に今般の新型コロナウイルス感染症対応として在宅勤務と取引の取捨選択の傾向を強めた結果、特にデリバティブ市場では流動性が大幅に低下する一方で、現物市場では取引が比較的見られる状況である。今後、首都圏の緊急事態宣言が解除されれば、徐々に流動性も厚みを回復していくと考えられるが、そのスピードは当初は非常に緩慢で、引き続き流動性には不安な状況が継続することを想定している。」

 実際に25日に緊急事態宣言の全面解除が決定された。市場参加者は在宅勤務の場合は、諸々の制約があり、直接に売買を行うことは難しい。このため、これから次第に緊急事態宣言の全面解除により市場参加者が再び戻ってくることが予想される。

 今回、注目された第2次補正予算に伴う国債発行計画の変更については、全年限増加は可能との意見が多かった。理財局の説明では「財投債を含めた国債の追加発行額が相応の規模」とあり、まだ具体的な国債増発規模がはっきりしていない。しかし、10兆円を超えるような、かなりの規模の増額となる可能性もあり、参加者からもそれを想定した意見となっていた。

 超長期債については30年、40年の増額よりも、投資家層の厚いとされる20年債の増額を求める声が強いようである。

 中短期債も日銀による買入だけでなく担保需要などあり、増額は可能との意見が多く出されていた。

 大規模な財政支出に伴う国債増額懸念から生じる金利上昇圧力はそれほど強くはないと見方が多い。今回の国債の増発についても、市場で大きく警戒されているわけではない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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