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日経平均は2万円台を回復し半値戻しを達成、楽観論と悲観論、どちらが正しいのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

 4月30日の東京株式市場で日経平均は2万円台を回復した。2万円を超えたのは取引時間中としては3月9日以来となる。1月の高値から3月の安値までの下落幅の半分を戻す、いわゆる半値戻しを達成した。

 ちなみに1月の日経平均の高値は24083円51銭、3月の安値は16552円83銭であったことで、半値は2万0318円17銭となる。

 相場の格言の一つに「半値戻しは全値戻し」というものがある。下落幅の半分まで値を戻した相場は、今後もとの水準まで戻る勢いがあることを示す。ただし、一度下げた相場が半分まで戻したら、欲張らずにそこで利益確定売りをした方がよいという見方もあるそうである(野村證券のサイトの証券用語解説集より)。

 日経平均が半値近くに戻った背景には、欧米の株式市場の反発がある。米国ではミシガン州やフロリダ州など一部の州で新型コロナウイルス感染拡大に伴い実施している営業規制について5月上旬から一部緩和する方針を明かした。また欧州でも、イタリアでは工場の操業などが認められ段階的に制限が解除されることになり、スペインでも条件付きで子どもの外出が認められるなど、制限を緩める動きが広がってきている。

 これにより制限されていた経済活動が徐々に回復するとの見方がでてきた。過度に悲観的な見方が後退し、これが欧米の株式市場に反映された格好となっている。

 29日に発表された米国の1~3月期GDP成長率は4.8%のマイナスとなった。4~6月期には年率換算で前期比40%減と戦後最悪のマイナス成長が予想されている。失業率も10%を突破するとの予想となっている。

 29日に開かれたFOMCでは、米国債などを制限なく購入する量的緩和政策などの維持を決めた。会合後に記者会見したパウエル議長は「経済の大部分が停止し、4~6月期は過去例のないマイナス成長になる」と指摘していた。

 日本でも緊急事態宣言を全国対象に1か月程度延長で調整すると報じられるなど、新型コロナウイルスの感染拡大は続いており、安倍首相は全面的な解除は難しいという認識を示した。

 欧米での一部の制限の緩和の動きは、感染拡大阻止への期待が強まったというよりも、深刻な経済への懸念もあり、感染拡大防止に務めながらも経済活動も徐々に再開せざるを得ないためとの見方もできる。

 それでは、もし日経平均が半値戻しを達成したら、そこからどちらに向かうのか。私の経験上、あくまでチャートからの見方によれば、「半値戻しは全値戻し」ではないかとみている。

 ただし、本音でいえば半値ですら戻ることなどないのではと見ていたし、ここからさらに上がるということは、現状を認識するとありえないのではないかというのか正直なところ、自分の見方ではある。

 しかし、新型コロナウイルスという未知の驚異に対して私自身、医学的なものを含めてそれほどの知見を持っているわけではない。またそれがどのように経済に影響を与えるのかも未知数であり、極端に悲観的にもみえるものの、いずれ収まるであろうことも確かであり、不透明要因が多い。

 長きに渡り相場の世界をみてきたが、この相場、どう考えてもおかしいということは常々あった。しかし、結論から言えば、相場が間違っているということはないというのが持論でもある。

 人間心理の集合体でもある相場の動きが、私には見えないものを示していることも多いと思っている。あとからそうであったのかとの解釈ができることも多い。もし相場が何かを示しているとみるのであれば、半値を超えて全面戻しとはいかないまでも、戻りを試すような動きとなる可能性もまったく否定はできない。

 あくまでチャートからみてのものではあるが、株のロングポジションを持てとまでは言い切れないが、少なくともショートポジションは少し警戒しておいたほうがよいとは思う。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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