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日銀は企業の資金繰り支援策を議論か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀は4月27、28日の金融政策決定会合で、企業の資金繰り支援策の拡充を議論する見通しと14日にロイターが報じた。社債やCPの買い入れ額を再び増やすことや、適格担保の拡大が選択肢になる。

 日銀は16日の金融政策決定会合(前倒しで開催)で、国債買入れやドルオペを含む一層潤沢な資金供給の実施、新たなオペレーションの導入を含めた企業金融支援のための措置、ETFとJ-REITの積極的な買入れにより金融緩和を強化することを決定した。

 新型コロナウイルス感染症にかかる企業金融支援特別オペの導入として、民間企業債務を担保(約8兆円)に、最長1年の資金を金利ゼロ%で供給する新たなオペレーションを導入した。

 4月7日に政府は緊急事態宣言を発令し、各自治体による休業要請などから、企業の資金繰りはさらなる悪化が見込まれている。日銀は企業の資金繰り支援を徹底するため、追加の支援策について検討するとしている。

 前回の決定会合以降の金融市場をみると、過度の乱高下は次第に収まりつつある。一時、パニック的なキャッシュ化も起きたことで、株と債券が同時に下落し、ドル化も意識されて円安が進行するなどの動きも出ていた。

 そのような動きは次第に収まり、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大の行方、さらには外出制限などによる今後の経済への影響などを見極めようとしており、金融市場は比較的冷静になりつつある。

 これにより、現状ではあらたな金融市場の安定化策は必要はないと思われる。もちろん27日、28日までに状況が変わる可能性もないとはいえず、その際には臨機応変に対応策を講じる必要も出てくるかもしれない。

 しかしこれ以上、国債やETFの買入を増やす必要があるかどうかも冷静に見極める必要はあろう。国債の買入増額は財政ファイナンスとの認識を強めさせかねない。株式市場でも中央銀行の買入の依存度を高めることは市場機能を失うという弊害も併せ持つ。

 いま中央銀行にとって行うべきことは、国内の新型コロナウイルス感染防止のための自粛などによって直接影響を受ける企業などへの支援策、景気停滞によって資金繰りなどが苦しくなる企業へのセーフティーネットを整備することが優先されると思う。そのために中央銀行が銀行を通じて、企業の資金繰り支援策の拡充をすることは必要である。

 これも金融緩和策の一環といえばそうなのかもしれないが、金融緩和策というよりも、金融支援策と呼んだほうが適切ではなかろうか。例えば、金融緩和策としてのマイナスの深掘りなどは、かたちだけのものとなり、むしろ景気に悪影響を与えかねない政策であるため、選択肢に入れるべきではないと思う。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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