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世界経済は大恐慌以来最大の落ち込みとなる可能性、これを見据えた戦略の必要性

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 国際通貨基金(IMF)は14日に発表した最新の世界経済見通し(WEO)で、新型コロナウイルス感染防止のための「大規模ロックダウン(都市封鎖)」を受けて約100年で最も深刻なリセッション(景気後退)に陥ると予想し、感染が長引いたり再来したりすれば景気回復は予想を下回る恐れがあるとの認識を示した。今年の世界GDPを3%減と予測し、1月に予想した3.3%増から悪化し、大恐慌以来最大の落ち込みとなる可能性が高いとした(ブルームバーグ)。

 緩やかな経済成長が続くとの期待が、予期せぬ新型コロナウイルスというブラックスワンが現れたことで状況が一変した。年初にここまでの落ち込みを予想したものは皆無であったはず。相場の動向を含めて先を見通すことは困難であることが示された。

 予想というのはあくまで足元の状況を延長してみたもので、その際にいくつかのシナリオを想定して考える。しかし、そのシナリオに含まれないことは往々にしておきる。今回の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大とその防止策による経済への深刻な影響もそうであろう。

 大恐慌以来最大の落ち込みとなる可能性というのも極端に思えるかもしれないが、これはあくまで今、起きていることによる影響から足元の状況をみての推測といえる。それを示すような数字も出てきていた。

 15日に発表された米国の経済指標をみると、昨日発表された3月の米小売売上高は前月比8.7%減と過去最大の落ち込みとなり、3月の米鉱工業生産はマイナス5.4%と、1946年以来の大幅な低下となった。4月のニューヨーク連銀製造業景気指数はマイナス78.2と過去最悪に。

 このように過去に例をみないような数字がすでに出てきている。そして今後も次々と出てこよう。これは米国だけでのことではなく、緊急事態宣言が出されている日本などでも同様である。

 まずは新型コロナウイルス感染拡大を食い止めることが先決なのは言うまでもない。しかし、それは経済成長を犠牲にせざるを得なくなる。

 中央銀行は積極的な金融緩和策を打ち出した。こちらは経済の下支えという意味もあるが、人と物が動かなくなり、お金も動かなくなることを防ぐことも目的となる。

 政府も積極的な財政政策を取らざるを得ない。その財源となるのは国債の発行となり、政府の債務残高はさらに膨れあがる。それを結果として中央銀行が市場から吸い上げる格好となり、これは財政ファイナンスやマネタイゼーションという格好にもみえる。

 新型コロナウイルス後にはこれらがあらためて問題視されるであろうが、いまはそのようなことを言っている状況でもない。それでも財源は無限にあるわけではない。場当たり的な使い方をしてしまうと、その効果がないどころか、債務のみが膨らんでしまう格好になりかねない。

 危機のときこそリーダーの手腕が求められる。しかし、そのリーダーが選択を間違うとさらなる危機をも招きかねない。今は感染拡大防止が最優先ながら、今後の経済危機、さらには債務危機などのリスクも見据えた戦略を練る必要があろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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