補正予算に絡んだ国債増発の行方、今回の国債増額による債券市場への影響は限定的か
政府は新型コロナウイルスの感染拡大に対する緊急対策として、4月中に対策を裏付ける第1次補正予算案を編成する。事業費の総額は名目GDPの1割程度に当たる56兆円を上回る規模を目指しているという。
今回の対策を実行するための補正予算で、財政支出は15兆円を超える見通しとされる。この2020年度1次補正予算編成とともに、政府系金融機関による資金繰り支援なども受けての財政投融資計画の追加に併せ、財務省は今年7月からカレンダーベースの市中発行額を増額する調整に入ったようである。
2020年度の当初計画からの国債の増額幅は16兆円規模と想定されているようである。年限別では40年債と物価連動債、流動性供給を除くすべての銘柄が増発対象となる見通しで、6か月物の国庫短期証券を発行する案も浮上しているとか(30日付ロイター)。
ちなみにリーマンショック後の2009年4月に出された2009年度補正予算の財源としては、建設国債を7兆3320億円、赤字国債を3兆4870億円と合わせて計10兆8190億円の追加発行となっていた。さらに財投債の6兆1000億円を含め、国債合計で16兆9190億円追加発行された。この際にも2年債から40年債にかけて増額されており、今回も同様な増額になると予想される。
注意したいのは2020年度の前倒債の発行限度額の43兆円という存在である。今回の補正予算に絡む国債の増発は、市中発行の増額によってほぼ賄われるとなれば、前倒債の取り崩しはないか、小規模に限られることになる。
本来であれば、膨れあがった前倒債を取り崩すことも想定されたが、どうやらこれは今後のことを考えたバッファーとして残すという選択肢が意識された可能性がある。今年度の税収は大幅に減少することが予想され、また緊急事態宣言が出される可能性も出てきたが、今後の経済活動が一時的に停止状態になればあらたな経済対策も必要になると予想される。
ここまで、前倒債が大きく増加した背景として10年債あたりまでマイナスの利回りとなっていたことが要因となっていた。国債の発行の際に、額面を大きく上回る発行が続くことになり(現在の利率の最低は0.1%となっている)、その分の差額が本来見込まれた予算額を上回り、その分が前倒債の増加に繋がっていた。
日銀の長期金利コントロールや国債買入も継続されていることもあるが、2016年度以降はカレンダーベースの国債発行額が減少し続けていたことで、今回の増額による市場への影響は限定的ではないかとみている。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が続くことも予想され、さらなる補正予算の編成も当然考えられる。前倒債のバッファー分はあり、日銀の買入が継続したとしても、欧米諸国などでの国債の増発圧力も強まることが予想される。いずれは日本国債の増発余力に限界が見えてくる可能性も出てくるのではなかろうか。また、日銀が無理をすれば、財政ファイナンスとの認識が高まることも予想される。