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FRBやECBなどの中央銀行はさらなる緩和策を打ち出す

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 18日夜(日本時間19日朝)に開いた臨時のECB理事会で、新たに7500億ユーロの枠を設け、2020年末までに国債や社債などを購入していくことを決めた。

 パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)と名付けられたこのプログラムでは、既存の量的緩和(QE)プログラムの下での全ての適格資産カテゴリーに加え、信用の質が十分と認定される金融機関以外のコマーシャルペーパー(CP)にも対象を拡大する。ギリシャ国債も現行ルールの適用を免除して購入対象に含め、主要なリスクパラメーターの調整を通じて担保基準も緩和する。(19日付ブルームバーグの記事を参照)。

 今回もECBは利下げは行っていない。利下げはマイナス金利の深掘りとなり、副作用も大きくなる、このため、イタリアなどの国債利回りの急上昇への対処などを含め、市場の安定化のためには、あらたな資産購入プログラムが適切と判断したと思われる。

 FRBも18日夜、緊急信用プログラム第3弾として、マーケット・ミューチュアル・ファンド(MMF)から購入した資産を担保として差し出す銀行に最大1年間の貸し出しを行うと発表した。これは「マネー・マーケット・ミューチュアル・ファンド流動性ファシリティー」と銘打ち、MMFに投資家からの解約が殺到した場合も、MMF業界が機能不全に陥らない体制を整備する。緊急信用プログラムの発表はここ2日間で3回目となる。(19日付ロイターの記事を参照)。  

 そして、23日にFRBが発表した支援策第2弾には、借り入れコスト抑制のために債券を無制限で購入するほか、企業や州政府、地方自治体に確実に信用のフローが行き渡るためのプログラム創設などの対策が盛り込まれた(23日付ブルームバーグ)。

 英国のイングランド銀行も19日、政策金利を0.15%引き下げて過去最低の年0.10%にすると発表した。11日にも臨時で0.50%の利下げを発表し、1週間あまりの間に2度、合計で0.65%の緊急利下げとなる(19日付日経新聞の記事を参照)。

 イングランド銀行も事実上のゼロ金利政策ともいえる。同じ月に2回の利下げは、現行の金融政策運営の枠組みになってから初めてとなるが、前回の総裁はカーニー氏、今回はベイリー総裁にかわって初のMTCとなる。また、国債や社債などの買い入れも再開する。購入枠を2000億ポンド増やして総額6450億ポンドとする。

 19日には日銀も動いていた。この日には国債買入の予定はなかったものの、前場に総額1兆円、後場に追加で3000億円の国債買入を実施していた。臨時の決定会合が開催されることはなかったものの、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、市場が動揺を示すなか、積極的な資金供給を行う姿勢をみせ、欧米の中央銀行と歩調を合わせたような動きに出ていた。23日には予定されていた超長期ゾーンの国債買入に加え、臨時で中長期ゾーンの買入も加えられた。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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