ある意味、オイルショック、原油価格はどこまで下落するのか
9日の東京時間の朝、異変が起きた。原油価格が急落し、ベンチマークともいえるニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は時間外取引でも27%も下落し、一時11.28ドル安の30ドルで取引された。みたこともないような急落であった。北海原油代表油種ブレント先物も一時31%急落し、5月限は14.25ドル安の31.02ドルに下落した。
原因は6日の石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の協議での決裂にあった。サウジアラビアが提案した日量150万バレルの追加減産案をロシアが拒否したのである。
サウジアラビアの増産報道も原油先物の売り要因となった。2017年から続いた協調減産は今月限りで終了する。サウジアラビアは自主的な減産も取りやめ、現行の日量約970万バレルから4月以降は1000万バレルを超える水準まで増産すると報じられた。必要な場合には大幅な増産が可能であり、過去最大の日量1200万バレルまで増やすこともできるとの関係者の非公式なコメントもあったそうである。
6日の米国時間でのWTI先物4月限は4.62ドル安の41.28ドルで引けていた。4.62ドル安も10%以上の下落幅でこれも急落といえるが、9日の日本時間の朝にそれを大幅に超える下落幅となったのである。
2月9日の「原油価格はどこまで下落するのか」というコラム内で、WTI先物のチャートをみると40ドルが大きな節目となっている。ひとまず40ドル近くまで下落する可能性はあるが、ここを下回ると下落ピッチが止まらなくなる懸念もあると指摘したが、その40ドルをあっさりと割り込んできた。
時間帯からみて仕掛け的な動きであることも確かだと思う。同時にドル円も下落圧力を強めた結果、ドル円も103円台半ばまで9日の朝に急落(円高ドル安)となっていた。この円高と原油安から9日の東京株式市場では不安感を強め、日経平均はあっさりと2万円を割り込んできた。
1973年のオイルショックは10月に第4次中東戦争が始まったことがきっかけとなった。アラブ諸国は禁輸措置を実施し、OPEC加盟国中のペルシャ湾岸6か国、原油価格の21%引上げを決定した。この結果、石油価格は一気に4倍となり、卸売物価が前年比30%、消費者物価指数は前年比25%も上昇したのである(第一次石油ショック)。
今回も反対の意味ではあるが「オイルショック」ともいえるような出来事となった。きっかけはOPECプラスの協議決裂とサウジの増産観測であった。しかし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって原油需要の後退観測もあり、原油価格が下落基調となっていたことでそれが加速された面もある。これから原油は全面的な価格戦争に突入するのではないかとの見方もある。
WTIのチャートは下に崩された格好となり、2016年2月につけた25ドル近辺が次の節目となる。
この原油先物価格の下落結果、我々の使うガソリン価格などが低下することが期待される反面、原油価格は物価動向に反映されやすいことで、物価の下方圧力が加わることになる。それでなくても新型コロナウイルスの感染防止に向けた動きで経済が停滞するなか、景気そのものも悪化する懸念が強まる上に、物価も下落するという事態が今後発生してくる可能性が出てきた。