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FRBは0.5%の緊急利下げを実施、日銀なども協調利下げを行うかどうかは疑問

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 2月28日にFRBのパウエル議長が緊急の声明を発表し、「景気を下支えするために適切に行動する」と述べた。この行動には利下げが含まれるとみられ、28日の米国株式市場はこれを受けて急速に下げ幅を縮小させた。

 そして、3月2日に日銀は異例ともいえる「総裁談話」を発表した。

 「日本銀行としては、今後の動向を注視しつつ、適切な金融市場調節や資産買入れの実施を通じて、潤沢な資金供給と金融市場の安定確保に努めていく方針である。」

 必要となれば潤沢な資金供給を行うことが示された。実際に2日には4年ぶりに国債買現先がオファーされた。また、ETFを1002億円買い入れた。1回の買入額としては過去最大となった。これは潤沢な資金供給による金融市場の安定確保が目的となる。

 さらにECBのラガルド総裁は2日夜(日本時間3日朝)、新型コロナウイルスの感染拡大に対応して「潜在的なリスクに必要でふさわしい、適切で的確な措置をとる用意がある」とする声明を公表した。

 また、イングランド銀行の報道官は2日、新型コロナウイルスの感染拡大について「動向の監視を続けており、世界や英国経済、金融システムに与えうる影響を精査している」と語った(2日付日経新聞)。

 この一連の動きはそれぞれバラバラに行ったというより、連携して行ったとみて良いと思う。当然ながら、事務方は中央銀行同士で緊密に連絡を取り合っており、今回も協議を行った上でのそれぞれの声明なりの発表ということになったのではなかろうか。

 そして、主要7カ国(G7)の財務相・中銀総裁は、3日にも緊急の電話会議を開いて対応策を協議した。電話会議後に共同声明を出し、新型コロナウイルス(COVID19)の感染拡大と市場や経済状況に与える影響を緊密に監視しているとした上で、「強固で持続可能な成長を実現するため、また下方リスクから守るため、すべての適切な政策手段を用いるとのコミットメントを再確認する」と表明した(3日付ブルームバーグ)。

 そして、FRBは17、18日のFOMCを待たず、3日に緊急のFOMCを開き、政策金利を0.50%引き下げると発表した。タイミングはサプライズとなり、下げ幅もこれまでの0.25%ではなく0.50%とした。

 ただし、これを受けて、協調「利下げ」を行うかどうかは個人的には疑問である。それぞれ中央銀行の事情も異なっている。イングランド銀行などは利下げを行ってくる可能性はある。しかし、ECBや日銀にとって利下げはマイナス金利をさらに深掘りすることになる。これは経済実体そのものにとって有益なものとなるのかは疑問があるためである。

 ECBのラガルド総裁もこれ以上のマイナス金利の深掘りについては慎重となっていたはずである。市場安定には協調利下げというのがインパクトがあるのかもしれないが、協調して資金供給などで緩和効果を高めるというかたちでも、十分に市場に対する緩和効果はあるのではないかと思う。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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