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FRBは利下げも利上げも当面は見送りか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 12月10、11日に開催されたFOMCでは、全会一致で政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを1.5~1.75%で維持することを決定した。これは市場の予想通りというか、現状維持との示唆がパウエル議長などからあり、状況が大きく変化することがなかったことで、予想通りの結果となった。

 市場ではむしろ今後の動向の方に注目していたと思われる。前回の声明にあった見通しへの「不確実性は続いている」という文言は今回削除された。

 注目されたいわゆるドットチャートによる先行きの政策予測だが、参加者の中央値は「2020年は利下げも利上げもゼロ」となった。これもある程度予想されていたことではあるが、FRBは当面動かない姿勢を鮮明にした。

 パウエル議長は会見において、引き締め政策に戻るには、著しくて持続性のあるインフレ加速が必要だと述べ、ハードルが高いことを強調した。このハードルを高くしているのはトランプ大統領から緩和へのプレッシャーも幾分か含まれるのかもしれない。

 前回まで3会合連続で利下げを実施していた。この予防的としてきた利下げについても、今回は行わず、それについても打ち止め感を出してきた。これによって再び、トランプ大統領との対立姿勢を強めることになるかもしれない。しかし、今回の利下げ打ち止めには、米国の経済活動は緩やかなペースで拡大しているとの見方も背景にあるだけに、トランプ大統領としてもその前提条件まで否定はできないであろう。

 ただし、本当に来年のFOMCで金融政策の現状維持が続けられるかどうかは予断を許さない。米国では大統領選挙も控えている。米中の通商交渉もひとまず緩和しても、こちらの先行きも見通せない。英国の動向も見えてこない。また別のテールリスク、ブラックスワンが現れることも考えられる。あくまで現状は現状維持の継続を見込んでいるという状況にある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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