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FRBのパウエル議長は利下げ停止を示唆

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 FRBのパウエル議長は13日、上下両院合同経済委員会で証言し、トランプ大統領が求めるマイナス金利は持続的な成長や強固な労働市場、安定的なインフレを備える米経済にとって適切ではないと述べた(ロイター)。

 米経済にとってというあたりは、すでにマイナス金利政策を取っている欧州や日本に配慮したのかもしれないが、その欧州や日本でもここにきて景気の減速感は出ているものの、景気はそれほど悪化しているわけではなかった。

 また、14日、パウエル議長による下院予算委員会での証言では、「緩やかな成長の継続というのがわれわれの見通し、および期待だ」と指摘。「米経済はここ最近、スターエコノミーだ」とし、「リセッション(景気後退)の可能性が現時点で高まっていると考えられる理由は一切ない」と述べた(ブルームバーグ)。

 ずいぶんと強気の発言である。たしかに米国経済は欧州などと比較してリセッションに陥る可能性は現状低いといえる。かといってスターエコノミーと呼べるほどしっかりしているのかといえば、不安要素も多い。最も不安視されているのが米中の関税合戦ということになるのであるが。

 今回のパウエル議長の証言で最も注意すべきことは、景気拡大が続く見通しを示した上で「現在の金融政策が適切だ」とし当面の利下げ休止を表明したことか。

 ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁も14日に講演で、突然の景気悪化がなければ、追加利下げは必要ないとの認識を示した。金融政策の効果が出始めるまでに1年かかることもあるため、FRBは長期的な視野で見ていると述べていた。これはパウエル議長の利下げ停止示唆をフォローしていたとみられる。

 このようにFRBは12月のFOMCでは利下げは行わず、現状維持とすることを念頭に置いているとみられる。しかし、もし米中の通商交渉がこじれたりして金融市場が動揺するようなことがあれば、追加利下げを検討せざるを得なくなる可能性は残る。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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