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日米独の長期金利の動きから見えること

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 9月4日に日本の10年債利回りはマイナス0.295%まで低下して過去最低のマイナス0.300%に迫った。当日に債券先物も155円40銭まで上昇して過去最高値を更新していた。ここからの日本国債は下げ基調、つまり利回りからは上昇基調となっていた。

 これは日本の国債だけの動きではなく、米債に連動していたといえる。米10年債利回りは3日に一時1.42%に低下していたが、ここでいったんボトムアウトし、米10年債利回りは上昇に転じた。米中貿易戦争に対する懸念がひとまず緩和したことなどが要因となっていた。同様の動きはドイツの10年債利回りでも起きており、日米欧の長期金独は連動性を高め同時に上昇基調となった。

 日米独の長期金利はそれぞれ9月13日にいったんピークアウトしている。このきっかけのひとつとなったのが12日のECBによる包括的な金融緩和であった可能性がある。19日のFOMCでも追加利下げが決定され、再び日米欧の長期金利には低下圧力が加わった。ちなみに18日の日銀の金融政策決定会合は現状維持となった。

 ここから少し日米独の長期金利の連動が崩れてきた。正確には米独の長期金利が比較的落ち着いていたタイミングに、日本の長期金利が一時跳ね上がってきたのである。これはイールドカーブのスティープ化を狙って日銀が長期ゾーンなどの国債買入の減額を行ってきたことが要因とみられる。

 しかし、日本の長期金利は10月1日にマイナス0.15%を一時割り込んだ後、再び上昇し、マイナス0.2%台となっている。これは米独の長期金利にさや寄せしてきたようにもみえる。

 そしてここにきてドイツの10年債利回りは底固い動きとなってきており、米10年債利回りもいったん低下基調が止まってくる可能性もある。日本の長期金利も上げ下げしていたが、利回りでみて下値を切り上げつつあるように思える。

 今後の注目材料は米中の通商交渉となっているが、この長期金利の動きを見る限り、比較的楽観的な見方も出ていたのかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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