英国のEU離脱に向けた交渉前進の可能性
英国政府は2日、10月末の欧州連合(EU)離脱に向けた離脱条件の新提案を正式にEUに示した(3日付日経新聞)。
今回の新提案では「移行期間の終了時点で、EUとの関税同盟から離脱する」と明記した。これで英が関税同盟に残り続けるという中途半端な状況は回避できる。
最も焦点となっていた英領北アイルランドとEU加盟国アイルランドの国境の問題について、農産品や工業製品などの基準やルールに関して、北アイルランドだけEUルールに従うことを検討し、さらに国境付近での検査を省略できるようにする。そして、北アイルランドがEUルールに従うかどうかは同地域が判断するとあった。
現在開催中のラグビーのワールドカップ、日本が歴史的勝利を挙げた相手のアイルランドは、厳密にはアイルランドという国と英国領の北アイルランドの連合チームであった。アイルランドには2つの国が存在し、英国だけがEUを離脱してしまうと、その国境間を通じた通商などに関税が掛かることになる。ユーロはある意味国境をなくしてしまうような制度だけに、そこに再び国境を設定することに問題が生じることになったのである。
ジョンソン首相は演説で「新提案が実現しなければ合意なき離脱だ」と述べていた。この条件をEU側が飲むには、かなりの譲歩が必要になるとされるが、譲歩に動くのではとの観測も一部に出ているようである。
あまり期待してはいけないが、それで交渉が前進してくる可能性もないとは言えないかもしれない。17、18両日のEU首脳会議が注目となる。