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量の面では正常化が進む日銀の金融政策、追加緩和があるとすれば動かすのは金利か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 8月30日に日銀による国債買入において、残存5年超10年以下の国債買入を前回から500億円減額した。減額はあっても200億円か300億円との見方が強かったが、500億円という金額はサプライズであった。

 さらに9月2日の国債買入では、残存10年超25年以下のオファー額を1400億円と前回の1600億円から200億円減額させてきた。

 日銀が2営業日連続で国債買入額を減少させてきた。これも債券市場ではサプライズとなった。しかし、市場参加者は比較的冷静に反応していた。日銀による国債買入額の減少は、ここにきての世界的な長期金利の低下にともなう国内の金利低下にブレーキを掛けようとしたと捉えられた。

 29日に10年債利回りはマイナス0.290%まで低下し、過去最低利回りとなるマイナス0.3%に迫った。ここからさらに低下を許せば、日銀は長期金利の操作レンジを拡大してきたと捉えられかねない。そこで利回り低下にブレーキをかけるため、日銀は国債買入を減額したとの見方ができる。

 今年度の国債発行額は昨年度に比べて減額されているため、日銀としてはどこかしらのタイミングで減額したい意向であったとみられる。これは国債の需給バランスというか、少しでも市場で流通する残高も残したいとの意向もあったとみられる。そうでないと国債需給にさらなる歪みが生じかねない。

 日銀による国債買入の減額は金融緩和の後退とみられるリスクもあった。しかし、すでに日銀の金融政策の目標は量から金利に移行している。次第に国債買入の微調整に対して市場は反応が薄れつつあった。

 今回の国債買入の減額により、2020年度の日銀による国債買入はこのペースで行われ、さらに国債の償還等も含めると前年度比の日銀保有の国債は10兆円程度の増加に止まる可能性がある。ETFなどの購入規模はいまのところ変更はないが、最も大きな国債買入についてはある意味、正常化が進んでいるともいえる。

 9月のFOMCでの利下げ、ECBでの追加緩和の可能性があるため、為替市場への影響、そして10月からの消費増税による景気への影響も意識しての予防的措置として、日銀も何らかの追加緩和に動く可能性はある(べき論からは追加緩和は必要ないとみている)。

 それでも、あくまで動かすのは金利となろう。政策金利のマイナス幅を0.1%程度深掘りしてくることも予想される。それによる金融機関への悪影響を避けるために、なるべく負担の掛からないかたちで行われると予想される。いわば消費増税に対する軽減税率のようなものを加えるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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