英国での新首相誕生により、イングランド銀行総裁人事の行方にも影響か
英国のフィリップ・ハモンド財務相は21日、テリーザ・メイ首相の後任を決める与党・保守党の党首選でボリス・ジョンソン氏が勝利した場合、同氏が首相に就く前に自らが辞任する考えを示した。英国の欧州連合(EU)離脱のジョンソン氏の戦略に全く合意できないためと説明していた(AFP)。
そして、このハモンド財務相はイングランド銀行の次期総裁の選任を新政権に委ねたい意向だと伝えられていた。
英国の財務省は2020年1月末で退任する予定のカーニー総裁の後任を選ぶ採用活動にすでに着手していた。しかし、ジョンソン首相の登場により、カーニー総裁の後任人事が白紙となり、ジョンソン氏の意向に沿った人物を充てる人事をしてくる可能性がある。
日本では2012年12月の衆院選で自公が圧勝し、政権交代が起きた。この結果、安倍首相が登場したわけだが、この際に日銀に対し大胆な金融緩和を求めた。これは日銀総裁、副総裁の人事にも影響し、2013年3月に黒田日銀総裁が誕生した。4月には異次元緩和と呼ばれた量的・質的緩和を決定した。
米国の中央銀行にあたるFRBのトップである議長の人事に関しては、2018年2月にイエレン議長が異例ともいえる1期だけで退任するという事態が起きている。イエレン議長に関しては、緩和の出口政策で功績があったとされているが、それがお気に召さなかったのがトランプ大統領だったようで、パウエル副議長を議長に昇格させた。しかし、そのパウエル議長も出口戦略を継続させたことで、トランプ大統領はパウエル議長を罷免したがっているとの観測も出ていた。
ECBのドラギ総裁の後任人事については、ドイツ連銀のバイトマン総裁が有力候補とされていた。しかし、ブンデスバンク出身者の金融政策の姿勢に対する警戒感も強かったことに加え、欧州委員長人事も巡ってドイツとフランスがそれぞれを分かち合う格好となったことで、予想外ともいえるIMFのラガルト専務理事に白羽の矢が立った。ラガルト氏はいわゆる金融緩和積極推進派ではないものの、バイトマン氏に比べると、中立的な立場となろう。
そして、イングランド銀行の総裁人事について、当然ながらジョンソン氏の意向が強く反映されたものとなることも予想される。何事、異質とされるジョンソン氏の行動から、突飛な人事となることも予想され、その候補にどのような人物が充てられるのかも注目する必要がある。いずれにしても、金融緩和に積極的な人物が充てられる可能性が十分にありうるか。