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中央銀行とは何だろう

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 中央銀行と聞いてあなたは何を思い浮かべるだろか。学生時代に政治経済の教科書で習ったことを思い出すかもしれない。そこからの答えであれば、紙幣を発行するところ、政府の銀行、銀行の銀行といったところになろうか。

 金融政策を決めているところという答えもあるかもしれない。日銀といえば金融政策を決定し、それによって景気や物価に影響を与える大きな役割を持っている。それが日銀の主力業務であると認識されている方も多いのではなかろうか。実はそれは違う。

 あなたはキャッシュレスに興味はあるかと聞かれれば、関心ありと答える人は多いであろう。ビットコインなど暗号資産についても同様に関心があるかといえば、かなりの人が関心ありと答えるかもしれない。しかし、キャッシュレス化にしろ、以前に仮想通貨と呼ばれていたビットコインなどにしろ、キャッシュ、つまり現金紙幣とは何であるのかという根本的なところの知識がないと理解が難しい。それにはどうしても中央銀行が果たしている役割、業務そのものを知る必要がある。

 株が下がったり、円高になったりすると中央銀行に対して金融緩和をしろ、との声が強まる。国のトップがあからさまに中央銀行に対して金融緩和策を求めたり、やはり国のトップが法改正などをちらつかせて異次元の金融緩和策を行うように求めたりすることがあった。これは裏を返すと政府ができない仕事を日銀がしているともいえる。

 ここに中央銀行の独立性という問題も出てくる。それではなぜ政府は中央銀行の独立性を脅かすようなことをして金融緩和策を求めてくるのか。それには中央銀行の金融政策による効果への幻想がある。幻想と言ってしまったが、少なくともそれを金融市場が期待することも多く、期待に応えようと中央銀行が何かしらを示唆するだけで株価が上昇したり、通貨が下落したりする。株価の上昇はともかく、どうして通貨が下落して、それを市場が好感するのか。このあたりの仕組みについても知っておく必要がある。

 多くの人にとっては中央銀行が何をしてようがあまり関心はないように思われる。しかし、中央銀行は何のためにどのような役割を担って、現実にどのようなことを行っているのかという知識があれば、もう少し社会の仕組みへの理解が深まるのではなかろうか。私たちは水道の蛇口をひねれば水を使え、スイッチをいれると電気が使える。上下水道や電気、都市ガスなどの仕組みはある程度、理解しているかもしれない。それではどうして私たちはお金をいつでもどこでも使えるのか。お金を渡せばどうして物が買えるのか、という仕組みについてどれだけ知っているであろうか。その仕組みがある程度理解できると、中央銀行という存在がなぜ必要であるのかを理解できるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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