米利下げ観測が強まる
FRBのパウエル議長は下院金融委員会での半年に一度の証言において、「貿易問題での緊張を巡る不確実性と、世界経済の強さに対する懸念が引き続き重しとなっている」と語った。そしてこれらに対処するため「必要に応じて行動する」と述べた。6月の雇用統計を受けても米金融当局の見通しは変わらなかったとした。つまり、今後の利下げの可能性を示唆した格好となった。
この日に発表されたFOMC議事要旨(6月18、19日開催)では、景気先行きの「不確実さと下振れリスクが著しく高まった」との見方で一致していた。そして数名が、見通しが一段と悪化した場合には緩和政策が必要と主張していた。
これを受けて今月30、31日に開催されるFOMCでは0.25%程度の利下げが賛成多数で決定される可能性が高まった。利上げを主張していた参加者もいるため、全員一致とはならないと予想される。また、予防的措置であれば、0.50%の利下げはないとも予想される。
ただし、今回のパウエル議長の発言を受けて、年内複数回の利下げを市場は読み込んできているようである。たしかに過去のFRBの金融政策はいったん方向を変えるとある程度、そちらの方向で段階的に金融政策を変更している。問題はペースとなろうか。
正常化に向けた利上げについては2015年12月に開始されたが、その次の利上げは2016年12月となり1年間は動かさなかった。その後はFRBの議長会見が行われるFOMCにて段階的な引き上げが実施されてきた。
今回についても足元景気が悪化してきているわけではなく、予防的な利上げとなるのであれば、その効果を確認したいとの理由で次回までの利上げには、ある程度の猶予期間を設けることも予想される。今年に入ってからFRB議長の会見は、毎回のFOMCで実施されることになり、議長会見と政策変更が紐付けされることもなくなる。
今月の利下げが行われたとして、その背景にトランプ大統領など政権への配慮がなされたとの見方も否定はできない。トランプ大統領としては来年の大統領選挙を見据えて、景気というか株価を引き上げたい意向も強いようである。ただし、大統領選挙期間中などは、金融政策の変更は行わないのが通例となっているようである。FRBがどういったスケジュール感を持って利下げを行ってくるのかも注意する必要がある。