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日本のキャッシュレス化は本当に18.4%でしかないのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 今年10月の消費税率10%への引き上げにあわせて「酒類及び外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が結ばれた週2回以上発行される新聞」に限り、税率を8%に据え置く「軽減税率」が導入される。その際にキャッシュレス決済で買い物をした人に対してポイントで還元する制度の導入も検討されている。

 「酒類及び外食を除く飲食料品」の区分けの面倒さや何故新聞が、という疑問はさておき、キャッシュレス決済でのポイント還元というのにも違和感というか無理矢理感がある。

 どうもキャッシュレス化促進ありきで、我々のニーズや店側の事情などは置いといて、進められている気がしてならない。日本におけるキャッシュレス決済は他国に比べて本当に遅れているのかという疑問もある。キャッシュレス化の主役となりつつあるFelicaやQRコードはもともと日本の技術である。

 経済産業省が発表したキャッシュレスビジョンによると、世界各国のキャッシュレス決済比率(2015年)の比較を行うと、韓国の89.1%を始め、キャッシュレスが進展している国では軒並み40%~60%台であるのに対して、我が国は18.4%にとどまるとしている。このため、2025年までに日本の「キャッシュレス決済比率」を40%程度とし、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしている。

 この18.4%という数字そのものに疑問を持たざるを得ない。キャッシュレスについての範囲の決め方によってこういった数字が出ることも予想されるが、この数字が一人歩きしてしまっている。その結果、消費増税のポイント還元に合わせ、取り急ぎブームにみえるQRコード決済がここにきて乱立し、急いだあまり、セキュリティーに問題が生じるなどの事例も出てきたのではあるまいか。

 キャッシュレス化を進めるには、使う側のインセンティブを引き出す必要があり、ある意味強制的に拡げようとしても無理があろう。それ以前に日本でのキャッシュレス化は本当に他国に比べそんなに劣っているのか。もう少しキャッシュレスの範囲を拡大するなどして、再比較する必要もあるのではなかろうか。

 年金の2000万円問題もそうであるが、数字がまず一人歩きしてしまうことがある。2%の物価目標もそのひとつかもしれない。日本のキャッシュレス化は本当に18.4%で、韓国の四分の一以下でしかないのか。このあたりを再度、確認した上で、日本のキャッシュレス化について考える必要があるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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