サプライズ的な米朝首脳会談などを市場はどう評価してくるか

(写真:ロイター/アフロ)

 6月30日に板門店の韓国側施設「自由の家」で、事実上の3回目の米朝首脳会談が行われた。今回の会談は何もかもが異例尽くしとなっていた。大阪でのG20サミット終了後にトランプ大統領は韓国を訪問することは予定されていた。これまで米国大統領が韓国訪問時に訪れることの多かった板門店に訪れることも予定されていたように思う。しかし、そのタイミングで北朝鮮の金正恩委員長を呼び出すというのは、形式などにとらわれないトランプ大統領ならではとも言えた。これにより、まさかの米朝首脳会談の開催となった。

 もちろんこれは米国の大統領選挙を睨んだパフォーマンスとの捉え方もできよう。29日には米中首脳会談も予定通り行われた。こちらでは通商交渉が再開することで合意し、トランプ大統領は3000億ドル相当の中国製品への追加関税発動を先送りすると述べた。両者とも決裂は望んでおらず、最低の落としどころで合意した格好となった。これだけでは市場は想定の範囲内との反応を示した可能性があった。

 ところがここに予想もされなかった米朝首脳会談が加わった。いや米国のシークレットサービスなどでは、それもあるかと事前準備を行っていたとか、米中首脳会談で習主席に金正恩委員長との会談の可能性を問い合わせていたのではとの観測もあった。それでも相手が果たして会談に同意するのかは不透明な部分はあったのではないかと思われる。

 米中の通商交渉の行方については依然として不透明であり、お互いの妥協点を探る展開となることが予想される。しかし、米国側もファーウェイに対する禁輸措置を緩和するなどやや柔軟姿勢を見せている。2020年11月の大統領選挙に向けてある程度譲歩し、なんらかの妥協点に落ち着き、通商交渉を推し進める可能性はありうる。

 そこにアジアの地政学的リスクに関わる状況にもあらためて変化が出てきた。いったんあきらめかけていた米国と北朝鮮の対話が再開されるであろうことは間違いない。これは市場に蔓延していたリスクを多少なり軽減させることになろう。むろん米国とイランとの緊張関係などは残ることになる。

 ここで注意すべきは、今回のサプライズ的な米朝首脳会談と交渉再開で合意した米中首脳会談をどのように市場が評価してくるかである。市場がというよりもFRBがどう評価してくるのか、なのかもしれない。FRBのパウエル議長も将来の利下げの可能性を示唆していたが、その要因として景況感の悪化を指摘していた。今回の2つの首脳会談により、この景況感が改善してくる可能性がある。それが株価などにも反映するとなれば、米株価指数が再び過去最高値を更新してくる可能性がある(1日のS&P500は最高値を更新した)。そのような状況下で、利下げというカードをFRBが切ることは考えづらい。利下げ観測が後退して株価がどう反応するのか。仮に一時的に売られることがあっても、米国の景況感が回復傾向にあれば、自然と株価も上昇してくるはずである。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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