債券先物が過去最高値を更新した背景
米国株式市場ではS&P500が過去最高値を更新し、ドイツなど欧州の長期金利が最低を更新しているなかにあって、日本の債券市場のベンチマークといえる長期国債先物(債券先物)が中心限月として過去最高値を更新していた。
20日の日銀金融政策決定会合後の総裁会見で黒田総裁は、長期金利の変動容認幅について、過度に厳格に捉える必要はないと発言した。長期金利が変動容認幅の下限マイナス0.2%を下回っても日銀は容認かとの思惑が広がった。
21日の日銀による国債買入では減額など利回り低下にブレーキを掛けるようなことがなかったことを確認し、やや仕掛け的な買いが先物主導で入った。10年債の利回りはマイナス0.195%まで低下し、日銀の誘導目標の下限とされるマイナス0.2%に接近。債券先物も154円13銭まで上昇してきたのである。
154円台は久しぶりだなあと思っていたが、この水準は過去最高値であることをすっかり忘れていた。あとで記録を確認したところ、これまでの債券先物の中心限月の最高値は2016年7月27日につけた154円01銭であった。ただし、これは7月27日の15時に引けたあとナイトセッションの寄り付きで付けたものである。このため約定ベースでは154円01銭をつけたのは28日となる。
21日の超長期債はむしろ売られていたが、さすがに高値警戒が出たためとみられる。ここにきての超長期ゾーンの利回り低下はやはり2016年7月の動きに似ていた。当時の状況を自分で書いたものから確認してみた。
2016年7月6日に日本の20年国債の利回りは初めてのマイナスとなった。10年国債の利回りもマイナス0.285%と過去最低を更新した。この金利の低下は日本だけの現象ではない。6日の米国債券市場で米10年債利回りは一時1.31%台をつけ過去最低を更新し、30年国債の利回りも過去最低を更新している。ドイツの10年債利回りはマイナス0.2%台をつけ、スイスの50年債利回りが初のマイナスとなった。
このときの世界的な金利低下の原因を、たとえば単純に英国のEU離脱による影響とするわけにはいかない。また、バーナンキ氏の来日をきっかけにヘリコプターマネー議論も日本で盛んになっていたが、そんなものを債券市場参加者が鵜呑みにしていたとも考えづらい。しかし、日銀に緩和圧力が掛かっていたことは確かで、7月29日の日銀金融政策決定会合では「金融緩和の強化」が決定され、ETF(上場投資信託)の買入を現行の3.3兆円から6兆円とすることや企業・金融機関の外貨資金調達環境の安定のための措置が決められていた。
今回の日本の債券の利回り低下もその背景に海外、特に欧米の金利低下がある。そして、日銀に対する緩和圧力も同様かと思われる。