衆参同日選挙や消費増税の延期の可能性
トランプ米大統領は来日中の26日、日本との貿易交渉について「大部分は7月の日本の選挙の後まで待つことになる。大きな数字を期待している」とツイッターで表明した。
この「選挙」が複数形となっていたことで、安倍首相がもしかすると衆参同日選挙の可能性をトランプ大統領に伝えたのではとの憶測も出ていたようであるが、真偽はわからない。
4月30日に安倍晋三首相の私邸を訪ねた麻生太郎副総理兼財務相は「衆院選をやるなら7月以外にない」と伝えたとされる。東京オリンピックを控えて、景気の悪化も意識した提言ではないかとの観測もあった。ちなみに前回の1964年のオリンピック後に日本の景気は悪化し、戦後初となる国債が発行されるきっかけとなっていた。
果たして、このタイミングで衆参同日選挙をする必要があるのであろうか。もちろん選挙は水ものであり、どのような結果が出るのかは予測が難しい面はある。しかし、現状は野党が勢力を拡大することは考えづらく、自民党が圧勝する可能性は高いとみられる。
衆院選については解散権を持っている首相の判断次第であり、将来を見据えた戦略が必要となる。麻生副総理兼財務相は安倍政権を少しでも長く維持させるためにもこのタイミングでの解散を進言した可能性はある。それでも衆院を解散するにしても大義名分がないというか、それによって得られるのが政権維持の期間だけというのでは、大きな切り札を切る必要性が感じられない。
今年10月の消費増税を延期するために選挙で国民に問うという可能性もあるが、すでに今年度予算で消費増税の対策費用も計上しているだけでなく、その準備も着々と進んでいるだけに、ここでのちゃぶ台返しはむしろ批判を浴びる可能性がある。
自民党の甘利明選対委員長は27日のテレビ番組で、10月の消費税増税について「延期はもうない」と明言したそうである。首相から延期はリーマン・ショック級の事態が起きた場合だけだと説明を受けたとか。
リーマン・ショック級の事態というものがどのような事態を指すのかは疑問ではあるものの、現状、足元の景気がそれほど悪化しているわけではない。世界経済の先行きが不透明であることは確かだが、リーマン・ショック級の事態が起きているわけではないはずである。
同日選挙で消費税増税の是非を問うことは考えづらく、改憲にしても国民の反対意見も多いため、タイミングとしてもあまりよろしくはない。そうなると、衆参同日選挙や消費増税の延期の可能性は現実にはかなり低いと見ざるを得ない。