タリフマンことトランプ大統領の大暴れで円高株安、そして金利安に
ドイツのメルケル首相は30日、米国のハーバード大学の卒業式で講演し、「ベルリンの壁」の向こう側にある「自由」に憧れていた自身の経験を紹介しつつ、自由を阻害する保護主義や単独主義などの「壁」を壊して国際的な協力を進めるよう呼び掛けた。トランプ米大統領を間接的に批判した形で、卒業生らは熱狂的に拍手したそうである(共同通信)。
そのトランプ大統領は30日、メキシコが違法移民問題を解決しない限り、6月10日以降メキシコからの輸入品すべてに5%の関税を課す考えを示した(ロイター)。
メルケル首相が批判しようがなんのその、トランプ大統領のニュー「ディール」政策といえるメキシコとの移民問題の交渉の手段として関税を持ってきた。まさにタリフマン(関税男)として本領を発揮したといえよう。
中国に続いてメキシコが標的となり、今回は5%ではあるが、このトランプ大統領の姿勢を受けて金融市場は動揺した。
市場では中国との通商交渉はうまくいっているとのトランプ大統領の発言を当初は鵜呑みにしていたが、どうも現実は違うと気づき始めている。中国外務省の張漢暉次官が通商摩擦はむき出しの経済テロリズムだと述べたり、中国が米国産大豆の購入を停止しているとも報じられるなどむしろ貿易戦争はエスカレートする兆しすらある。6月末の大阪でのG20サミットでの米中のトップ同士の会談で解消できるとするのはあまりに楽観的な見方となる。
トランプ大統領がメキシコからの輸入品すべてに5%の関税を課す考えを示したとの報道を受けて、30日の日経平均は341円安となり、31日の米国株式市場でもダウ平均は354ドル安となった。
リスク回避の動きを強めたことから、31日に米国の長期金利は2.12%と約1年8カ月ぶりの水準に低下し、欧州でもドイツの長期金利は31日にマイナス0.21%に低下し、過去最低を記録した。外為市場では円高が進行し、ドル円は108円28銭まで下落した。
日本との通商交渉は日本の選挙後まで待つことになったようだが、それも一時的な配慮に過ぎない可能性もある。誰の制止も受けないタリフマンことトランプ大統領が来年の大統領選も見据えて、これから大暴れしてくる懸念もあり、市場はそれによる今後の世界経済への影響を危惧せざるをえなくなっている。その市場の危惧の矛先が中央銀行の金融政策に向かいかねないことにも注意する必要があろう。