中東情勢の緊迫化にも注意が必要か、原油価格に影響も
原油価格のベンチマークのひとつであるニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は、4月23日に66ドル台に上昇したあと、戻り売りに押され、5月に入り60ドル近くまで下落したところで、もみあいとなっている。
市場では米中の通商交渉の行方に目が向けられており、原油先物もそれを睨んだ動きとなっているが、念のため中東情勢にも目を向けておく必要があると思われる。
トランプ米大統領は1年前、イランと米英など6か国が2015年に交わした核合意からの離脱を表明。さらに米政府は今年の4月末にイラン産原油輸入禁止の適用除外を打ち切ると発表した。
イランの軍幹部は同国産原油の全面禁輸を米国が発表する前に、ホルムズ海峡の利用を妨げられるならイランが海峡を閉鎖すると述べていた。
欧州を歴訪中であった米国のポンペイオ国務長官は5月7日のドイツのメルケル首相との会談を「緊急の用件」があるとして突然中止し、その後、イラクのバグダッドを電撃訪問。当然ながらこれはイランの動向を睨んだものといえる。
米国のボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)は5日夜に中東に空母打撃群と爆撃部隊を派遣すると発表していた。イランが関係するとした「幾つかの不穏なエスカレートの兆候」に言及し、「明確なメッセージ」を同国の政権に伝えることが派遣の目的だと説明している(ブルームバーグ)。
新たに派遣されたのは「空母打撃群」と呼ばれる海軍部隊となり、原子力空母やミサイル巡洋艦、ミサイル駆逐艦、原子力空母などで編成される。今回はエーブラハム・リンカーンを中心とする空母打撃群が、戦略爆撃機「B-52 ストラトフォートレス」とともに中東を目指している。
米中の通商交渉の行方はひとまず9日、10日の閣僚級会議の結果ではっきりする。その後あらためて、きな臭くなっている中東情勢に市場の目が向けられる可能性もあり、米国やイランの動向、さらにそれによる原油価格への影響等にも注意しておく必要がありそうである。