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米中両国による追加関税の応酬の可能性が高まっているが、そもそも関税(tariff)とは何か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 米国のトランプ大統領は中国からの輸入品2000億ドル相当に賦課する関税率を、東部時間10日午前0時1分(日本時間同午後1時1分)にこれまでの10%から25%に引き上げると明らかにし、米通商代表部(USTR)は連邦公報のウェブサイトに正式な通知文書を掲載した。

 これに対して、中国も米国が計画する対中関税引き上げを発効すれば、報復措置に出る方針を表明した。

 ただし、トランプ大統領は8日の朝、中国の代表団が訪米するのは「合意を成立させるためだ」と同国が伝えてきたとツイート、ホワイトハウスのサンダース報道官は記者団に対し、「中国から、合意に前向きな示唆があった。米国の交渉団は明日、中国側と協議する。結果を見守る」と述べたそうである(以上、ブルームバーグの9日の記事より引用)。

 9日からのワシントンでの米中協議でぎりぎりの交渉が行われる。今回、米国の態度を硬化させたのは、中国の産業補助金を巡る問題とされているが、中国は米国側がある程度譲歩すると読んでいたのではとの見方もあった。中国の補助金は産業育成策「中国製造2025」の骨格といえるものであり、中国側としては撤廃することは難しい。このため改革案を明記することも控えようとしたものの、これは米国側からの怒りを買った、米国側はここは譲ることができないものであったといえる。今後、どのように決着するのか、決着できるのかは不透明ながら、お互い何らかの譲歩をしてくる可能性は確かに皆無ではない。

 ところで、いまさらではあるが、今回、市場を揺るがしているタリフマン(関税男)のタリフ(tariff=関税)とは何であるのかを確認してみたい。

 関税とは何か。これについては「税関」のサイトに説明がある。

「関税のしくみ」

関税とは

 「関税は、歴史的には古代都市国家における手数料に始まり、内国関税、国境関税というような変遷を経てきましたが、今日では一般に「輸入品に課される税」として定義されています。」

 関税といってもかなり複雑であり、詳しくは上記のサイトを確認していだきたいが、今回問題となっているのは「特殊関税」と呼ばれるものとなっているようである。

特殊関税

 「特殊関税とは、WTO協定で認められたルールとして、不公正な貿易取引や輸入の急増など特別の事情がある場合に、自国の産業を一時的に救済するため、通常課されている関税に追加的に課される割増関税で、不当廉売関税、相殺関税、報復関税及び緊急関税(セーフガード)などがあります。その他、各経済連携協定に基づく二国間セーフガードがあります。」

 上記は日本の関税に関するものではあるが、今回米国政府が発効しようとしているものも、この特殊関税にあたるものとなろう。中国が不公正な貿易取引を行っているとして、自国の産業を一時的に救済するため、通常課されている関税に追加的に課すものとなる。

 関税のサイトの特殊関税の説明には、「制度の濫用や恣意的な運用は避けつつも、適切に活用されることが重要です」とある。トランプ大統領の今回の対中関税引き上げは、この制度の濫用とも捉えられかねず、政治的な利用ともいえる。また、関税を上乗せすることによって米国政府の税収がその分増えても、米国内の景気に悪影響を与えることも予想される。このため米国株式市場などにも悪影響を与え、それが日本の金融市場にも影響を及ぼしているのが現状である。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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