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米政府機関閉鎖の解決の糸口が見えず

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 2018年12月22日から続く米国連邦政府機関の一部閉鎖は、1月20日で30日目に入った。これまでの連邦政府機関閉鎖の最長はクリントン政権時の21日間で、今回は最長期間を更新し続けている。

 米国での予算が成立しないことによる政府機関の閉鎖は過去何度か起きていた。直近では2013年10月にオバマ前政権の医療保険制度改革法(オバマケア)向け支出を巡り、ねじれ状態となっている米国議会で次年度予算が成立せず、与野党の対立が解けないまま、およそ18年ぶりとなる政府機関の一部が閉鎖される事態が発生した。

 この際の16日に及ぶ米政府機関の一部閉鎖による経済への影響については、第4四半期の成長率に対し0.2%から0.8%の影響が及ぶとの予測数値が金融機関などから出ていたが、実際にはそれほどの影響はなかったとの見方もあった。

 とはいえ、今回の政府機関の閉鎖の継続にあたって、全く影響が出ないということも当然ながら考えにくい。長引けば長引くほどそれによる影響が拡大する恐れがある。ひとつの例として、各地の空港でセキュリティーチェックを受ける乗客の列が日に日に長くなっていることが挙げられている。

 トランプ大統領としては、公約でもあった壁の建設に固執せざるを得ない面もあろうし、それが2020年の大統領選挙の行方にも影響してくるのではとの危惧もあるかもしれない。しかし、メキシコとの国境の壁建設予算をめぐってのトランプ大統領と民主党の対立は妥協点を見いだすのが困難とみられる。

 トランプ大統領は19日にホワイトハウスで演説し、過去最長となっている政府機関の一部閉鎖を解消するため、移民規制を緩和する代わりに、メキシコ国境での壁建設予算57億ドルを野党・民主党に認めるよう求める妥協案を示した(読売新聞)。しかし、民主党は難色を示し、閉鎖は継続されている。

 英国のEU離脱の行方についても不透明が強いが、米国の壁問題も解決の糸口が見いだせない。トランプ大統領と民主党のどちらも妥協しないとなれば、最終的には大統領選挙も睨んだ世論が解決策を導くかもしれない。しかし、それにも時間が掛かることは確かである。

 いまのところ米中の貿易交渉などが市場では大きく材料視されていることで、政府機関の一部閉鎖による影響はそれほど材料視されていないように思われる。しかし、これにより少しずつリスクが増幅されているようにも思われるため、今後の市場の動向にも注意が必要となろう。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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