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チューリップ・バブルの最終章とビットコイン・バブルの行方

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 映画「チューリップ・フィーバー」のサイトには、各界のエキスパートによる「絶賛の声」というページがある。エキスパートであるかどうかはさておき、ここに私のコメントを掲載していただいてている。それが下記となる。

 「バブルという言葉が生まれる以前にオランダで起きた歴史的なチューリップ・バブル。現在にも続くバブルの狂気が美しい映像で表現されている。」(金融アナリスト 久保田博幸)

 ヨーロッパで最も経済が発達した国となったオランダは、所得水準がヨーロッパで最高となり、消費や投資が活発化して行く。オランダのその地形や気候により花の栽培に適しており、特に好まれたのがチューリップ栽培であった。オスマン・トルコからチューリップが持ち込まれた当初は、貴族や商人など一部の収集家だけで取引されていたが、1634年あたりから一般個人も値上がり益を狙って、チューリップ市場に参入するようになったのである。

 珍しい品種が高値で取引されるようになり、1636年から1637年にかけて投機熱は最高潮に達した。居酒屋などで行われた先物取引などが主体となり、次第に実態のない取引が行われるようになる。珍しい球根は家一件分といったように、すでに価格は現実からかけ離れたものとなり、貴重品種以外の品種も高値で取引されるようになった。このあたりの状況も映画「チューリップ・フィーバー」でも描かれていた。

 1637年2月にチューリップ市場は突然暴落した。暴落の理由らしい理由はなかったものの、春になると受け渡しの期日が来ることで、その前に売ろうとしたところ買いが入らず、売りが売りを呼ぶ展開となったのではないかといわれる。先物の決済が行われず、債務不履行が次々に起こる。混乱が収まったのはやっと政府が乗り出した1638年5月である。

 数千人規模で支払いきれない債務者がいたといわれたオランダのチューリップ・バブルであるが(バブルという言葉そのものはのちの南海バブルから)、そのバブル崩壊による実態経済への影響はほとんどなかったといわれている。このためチューリップの熱狂が本当にあったのかどうか疑問視する見方もあるが、これをきっかけにオランダのチューリップが世界に広く認識され、花卉産業が発達していったことも事実である。

 このチューリップ・バブルを彷彿させたのが、ビットコイン・バブルとなる。その値上がりペースはチューリップ・バブルをも超えたともされた。しかし、チューリップ・バブルと同様に急激な下落を迎えた。

 映画にも描かれていたようなチューリップバブルほどの混乱はいまのところビットコインを中心とする「暗号資産」(すでに仮想通貨との表現は適切ではないとの見方も)では起きていない。しかし、結果としてはビットコインの価格変動はバブルであったとみられ、その結果はどうなるのかは、やはり過去の歴史が示しているのではないかとも思われるのである。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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