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来年度の国債発行計画に対する議論

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 11月20日に開催された国債市場特別参加者会合(第78回)議事要旨が財務省のサイトにアップされた。今回は来年度の国債発行計画についての意見交換を行ったようだが、それにあたって10月に開催された国の債務管理の在り方に関する懇談会における議論が紹介されていた。

 在り方懇での財務省側からの説明で、注目すべきポイントは下記あたりか。

 「近年の債務の長期化の結果、発行残高が増えているにも関わらず、借換債の発行額は減少しており、国債発行総額も減少。また、30年度補正予算において、建設国債が0.7兆円増額され、今年度の歳入となる国債発行総額も同額増加しているが、併せて来年度の借換債の前倒し発行を同額減額することとしたため、カレンダーベース市中発行額は変わらない。」

 「国債発行計画について、計画時点の見積もりと実績を比較すると、要調達額については、28年度のように、年度途中に経済対策があれば資金調達額が上振れるが、そうでなければ、計画時点で保守的な見積もりがなされるため、税収の上振れや歳出の不用等が生じ、実際に必要となる資金調達額は少なくて済むことが多い。」

 その結果として、前倒債の発行額は26年度末の28.8兆円から昨年度末の49.4兆円に増加している。カレンダーベース市中発行額についても、前倒債を活用してある程度抑制していくことが必要としている。つまりは50兆円規模のバッファーが存在することで、来年度のカレンダーベース市中発行額については減額が想定される。

 その減額について、国債市場特別参加者会合で議論されたわけであるが、総じて20年債以下の減額の余地ありとの見方が多くなっていた。

 「10年債、20年債を中心に発行を減額し、それに呼応する形で日銀買入オペが減額されることにより、マーケットの流動性が回復し、価格発見機能が強化されると考える。」

 上記のように日銀の国債買入の減額も加われば、多少なり市場流動性が回復するのではとの期待も出ていた。20年、10年、5年、2年あたりが減額対象となりそうである。

 「30年債、40年債は投資家需要に支えられており、発行額を減額した場合に日本銀行が買入額を減らせる余地が少ないため、発行額は維持してほしい。」

 上記の意見などもあり、30年と40年の減額は見送られるとみられる。

 ただし、「中期ゾーン、特にマイナス金利の5年債への需要が薄い。」との意見も出ていた。日銀によるマイナス金利政策の解除だけでも、かなり国債市場の機能は改善するとみられるのであるが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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