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見方を変えると日本のキャッシュレス化は進んでいた?

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 金融庁が9日、国内のキャッシュレス決済に関する独自の試算結果を明らかにした。三菱UFJ、三井住友、みずほの3銀行の個人給与受取口座を対象に、1年間に出金された85兆円の行き先を分析したところ、クレジットカードや家賃、公共料金、ローン返済金などが口座から自動に引き落とされる口座振替が32%。さらにインターネットバンキングやATMなどによる振り込みが22%強。実際に現金を引き出さずに決済・出金する「キャッシュレス」比率は54%に上った(9日付け日経新聞)。

 経済産業省が今年3月に発表したキャッシュレスビジョンによると、世界各国のキャッシュレス決済比率(2015年)の比較を行うと、韓国の89.1%を始め、キャッシュレスが進展している国では軒並み40%~60%台であるのに対して、我が国は18.4%にとどまるとしている。このため、2025年までに日本の「キャッシュレス決済比率」を40%程度とし、将来的には世界最高水準の80%を目指すとしている。

「キャッシュレスビジョン(要約版)」経済産業省

 上記のキャッシュレスの主な支払手段として、電子マネー、デビットカード、モバイルウォレット、クレジットカードが挙げられている。

 これに対して金融庁の試算は、銀行口座を利用した口座振替なども加味したもので、経産省のキャッシュレスビジョンと視点は異なるものの、現金を使わないという意味ではキャッシュレス決済であることに変わりはない。

 日本では国民のほとんどが銀行口座を保有しているとされる。さらにそこからクレジットカードの決済を含め、公共料金等の自動引き落としなどキャッシュレスでの決済が行われている。

 我が家をみてみると、口座をひとつにまとめきれていない面もあって、いったん現金化している部分はあるが、それをまとめれば現金の利用はかなり限られることになる。しかも、食料品などではスーパー系の電子カードを利用することが多く、それもキャッシュレス決済と見なせば、たしかに現金の決済比率はかなり低下する。日用品や書籍などはアマゾンでの利用も多く、こちらはクレジットカード決済となる。電車等の利用時も電子カードを使う。そうなると純粋な現金決済は主に私のお酒の代金などに限られるような気もする。

 たしかに電子マネー、デビットカード、モバイルウォレット、クレジットカードの利用では海外に比べて、日本の普及比率は相対的に低いかもしれない。しかし、電子決済化という面では、むしろ進んでいるとの見方もできるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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