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今年は注目度の低いジャクソンホール

久保田博幸金融アナリスト
昨年のジャクソンホールにて(写真:ロイター/アフロ)

 FRBは16日、パウエル議長が8月24日にワイオミング州ジャクソンホールで開かれる経済シンポジウムで講演すると発表した。変化する経済情勢における金融政策について講演するそうである(ロイター)。

 この記事を読んで、そういえばジャクソンホールの季節なのかと思い出した。というよりも、ジャクソンホールのことをすっかり忘れていた自分に驚いた。市場でもほとんど話題にならなかったこともあるが、市場における金融政策への関心度が、ここにきてかなり低下してしまったのであろうか。

 米国ワイオミング州ジャクソンホールで開催されるカンザスシティ連銀主催のシンポジウムは、本来であれば市場参加者にとり大きな注目材料となる。

 ジャクソンホール (Jackson Hole) とはワイオミング州北西部に位置する谷のことを意味する。このシンポジウムには著名学者などとともに、日銀の黒田総裁など各国の中央銀行首脳が多数出席することで、金融関係者によるダボス会議のようなものとなっている。

 ロシア危機とヘッジファンド危機に見舞われた1998年に、当時のグリーンスパンFRB議長がこのカンザスシティ連銀主催のシンポジウムの合間にFRB理事や地区連銀総裁とひそかに接触し、その後の利下げの流れをつくったとされている。

 2010年8月27日にはバーナンキ議長(当時)がQE2を示唆する講演をジャクソンホールで行った。2014年8月22日のジャクソンホール会議でECBのドラギ総裁は、資産購入プログラムの導入を示唆したとされた。

 今年のカンザスシティ連銀主催のシンポジウムは8月23日から25日にかけて開催される。

 FRBに関しては、今年は年4回程度の利上げが予定されているが、その後の利上げについては限界があるとの見方も出ている。ECBも年内に資産買入は停止し、ある程度の期間を置いてから利上げを模索する。イングランド銀行も出口戦略をとしつつあるが慎重である。日銀は政策の柔軟化を決定した。

 むろん、市場もこれらの中央銀行の動向を無視しているわけではない。しかし、それ以上に米国と中国との貿易摩擦やトルコの状勢、英国のEU離脱、イタリアの政局などの動向の方が気掛かりとなり、リスクオフとリスクオンの相場が交互にやってくるような状況になっている。

 市場はその時々で注目すべき材料とその材料に対する比重が変化する。その変化を感覚で見極められるかどうかも市場で生き残るためには必要なものとなる。それにはある程度の経験の積み重ねが必要となり、それが勘として機能するようになれば、マーケットでサバイバルすることも可能となる。

 少し話しが逸れてしまったが、いまのところ注目度は低いとはいっても、8月23日から25日にかけて開催されるジャクソンホール会議が突如、注目されるかもしれない。念のためそこからの当局者からの発言内容についても注意する必要がある。もしかすると何かしらの示唆があるかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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