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日銀の指し値オペ水準が0.10%と0.11%から修正され、14時にオファーされた理由

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 7月27日の14時に日銀は固定利回り方式による買い入れ(指し値オペ)をオファーした。固定利回り方式による残存期間5年超10年以下の固定利回較差は0.015%。この結果、10年利付国債351回の買入利回りは、0.100%となる。

 一応、指し値オペが入った段階で日銀のサイトのオペレーション(日次公表分)で上記の内容を確認していた。しかし、ざっと目を通して、すぐに次週の予想などを書く仕事に移ってしまい、小さいながらも大きな修正に気がつくのが少し遅れてしまった。

 これまでの指し値オペの10年債カレント利回りに引き直した水準は0.110%であったのに、今回は0.100%と0.01%引き下がっていたのである。

 23日に10年債利回りが0.090%まで上昇していた際に日銀は10時10分に10年債カレントの0.110%で指し値オペをオファーした。0.110%以上に上昇していたわけではないので、いわゆる空砲となったが、ここで利回り上昇を抑制する姿勢を示した。

 市場では20日の時事とロイターの報道で、日銀は異次元緩和を継続させるために、副作用の軽減のため、債券市場の機能の回復、金融機関の収益を考慮した対応を検討するとの観測が強まっていた。債券市場の機能回復としては、長期金利の操作目標の柔軟化、つまりは指し値オペの0.100%という水準の0.200%あたりへの引き上げが予想される。

 そのため23日にはいきなり債券市場が息を吹き返して、10年債利回りが0.1%近くに上昇したわけではあるが、日銀としてはあくまで30、31日の決定会合での検討事項であるため、それを前に金利引き上げを容認と捉えられる姿勢を見せることはできない。そのための23日の指し値オペと思われた。

 ところが27日の前場、10年債利回りは0.100%に上昇していたにもかかわらず、日銀は指し値オペをオファーしなかった。もちろん0.110%に達していたわけではないので、いったん様子を見たのとの見方もできる。10年債利回りはその後0.105%に上昇し、0.110%を試すような動きとなった。

 指し値オペは臨時でも打てる。12時の可能性もあったが、結局後場での定例時間といえる14時というタイミングで打ってきた。打ってきたこと自体は、23日と時間は違えど同様に31日以前の0.110%以上の上昇は容認しないとの姿勢を示したとみていた。ところが、指し値オペの水準が0.110%から0.100%に引き下げられていたのである。

 0.110%は固定されたものでなく可変であり、柔軟に修正できることを引き下げるかたちで示した。このタイミングでいきなり指し値オペの水準を引き上げると市場へのインパクトは大きく、日銀は何をしているのかとなってしまうが、引き下げる分にはインパクトは大きくない。しかし、これにより指し値オペの水準を修正しうることがあると市場に示した。0.110%はあくまで、たまたまそうなってしまったもので、その水準に意味があるものではない。

 30日に10時10分に指し値オペはなかったこともあり、10年債利回りは0.105%に上昇し、後場に入り0.110%に上昇した。これを受けて日銀はやはり14時に指し値オペを0.100%でオファーした。27日の指し値オペは940億円の応札・落札額となったが(指し値オペは全額落札される)、30日は1兆6403億円もの応札・落札額となり、市場参加者が長期金利の操作目標の柔軟化に備えていることが窺えた。

 これにより指し値オペでの下方修正ではなく上方修正の可能性を市場にも示したことになる。30、31日の決定会合で長期金利のゼロ%程度との表現は変えずとも、異次元緩和の副作用を意識した柔軟化対応を検討し、ゼロ%程度の範囲内での長期金利の上昇を容認してくる姿勢を示すことが予想される。

 決定会合の終了時間は昼過ぎになると予想される。23日の指し値オペが10時10分であったものが、27日と30日は14時となっていたのは、31日の金融政策決定会合を踏まえ、指し値オペをする可能性の時間は決定会合後の14時である可能性を示したものであったのかもしれない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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