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国内投資家は5月に米国債主体に外債を売り越しに

久保田博幸金融アナリスト
(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 9日に財務省は5月の国際収支状況(速報)を発表した。この中で、財務省のサイトにアップされた付表3にある対外・対内証券投資のうちの対内証券投資(地域別内訳)から日本の投資家がどのような海外資産を購入していたのかを確認してみたい。

「国際収支状況」財務省 http://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/release_date.htm

 対外証券投資で日本国内の投資家は、海外の中長期債をネットで1兆4543億円の売り越しとなっていた。売り越しは2月以来となる。ちなみに4月は2兆2888億円買い越しとなっていた。これを地域別内訳で確認してみたい。

 米債については2兆710億円の売り越しとなり、4月の7026億円の買い越しから売り越しに。ドイツ債については7121億円の売り越し、4月も6722億円の売り越しとなっていた。フランス債は1571億円の売り越し、4月は2980億円の買い越し、オランダ債は1329億円の買い越し、4月は3060億円の買い越しとなっていた。そして、イタリア債は854億円の売り越し、4月は1691億円の買い越し。スペイン債は387億円の買い越し、4月は3499億円の買い越しとなっていた。英国債は3971億円の買い越し、4月は196億円の買い越し。

 昨年10月以降、日本の投資家はドルヘッジコストの高騰を嫌気して、欧州債へのシフトを進めてきたとされる(ロイター)。日本の投資家がユーロを介して欧州の国債などを購入すると一定の利回りが確保できたためとも言える。特にイタリアやスペインなど周辺国の国債利回りは、ドイツなど中核国の国債の利回りに比べて高い。

 5月にはイタリアの政情不安が意識され、リスク回避の動きを強めた。米国債やドイツ国債などが買い進まれたことで、利益確定売りを国内投資家が行っていたものとみられる。

 6月の対外及び対内証券売買契約等の状況(指定報告機関ベース)によると、居住者が外債(中長期債)を1兆591億円買い越していた。6月に入り米債はいったん売られていたことで、そのタイミングで国内投資家は押し目買いを入れてきた可能性がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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