中国でのスマホ決済事情からみた日本のキャッシュレス化に必要なこと

(写真:ロイター/アフロ)

 中国では支付宝(アリペイ)などスマホ決済を手掛ける事業者に対し、利用者が前払いしたお金のすべてを、中国人民銀行(中央銀行)に預けるよう義務づけると4日の日経新聞が報じた。アリババ集団とスマホ決済市場を二分する騰訊控股(テンセント)の両社にとって影響は避けられない見通しとなった。

 これは何が問題となっているのか。アリババ集団のAlipay(支付宝)とテンセントのWeChat Pay(財付通)が中国でのスマホ決済の2強とされる。中国でのスマホ決済の普及はこの両社が競って拡がった面もあるが、それぞれ銀行ではない。それではどのような形式で両社は決済を行っているのか。

 アリババは電子商取引サイトなどを通じて多数のユーザーを獲得し、中国版のLINEとされるメッセンジャーサービスのWeChatも中国で高いシェアを誇っていたが、こちらもネットを通じた電子商取引を行っていた。

 2002年に金融企業「銀聯」が設立されたが、これは中国の銀行カード産業の発展を目的としている。クレジットカードというよりも多くはデビットカードとして発行されている。銀聯は店舗に銀聯カードが使えるように、POS連動可能なカード読取機を貸し出し、カードは急速に普及することになる。これにより中国でのキャッシュレス化が進むわけだが、中国政府はさらに第三者決済機関に精算業務への参入を認可することになる。

 これを受けてアリババ集団のAlipayとテンセントのWeChat Payが店舗での決済業務に進出することができるようになった。しかも銀行と紐付けすることによって登録したカードの口座から即座に引き落とすことが可能となった。さらにプリペイドカードのようにアプリ内に事前にチャージした金額から支払うことが可能となったのである。今回、問題となったのが後者のチャージである。

 アリババやテンセントは、前払い金を預かっても利用者への利息はゼロである一方、滞留資金を銀行に預けるなどして金利収入を得ていた。アリババなどが受け取っている金利は市場推定で1%台半ばとされる。滞留資金は現時点で5000億元(約8兆3000億円強)規模にのぼり、年換算で1000億円超の金利収入を得ている計算となる。これが2019年以降、この利息収入はほぼゼロになる見込み(前述の日経新聞の記事より)。

 AlipayやWeChat Payを利用する際に、店舗側が支払う手数料は原則ゼロとされているようである。これは滞留資金による利息収入などにより利益を挙げていたためとみられ、今回の措置によりこのビジネスモデルが崩れる可能性がある。

 ちなみに日本ですでに行われているスマホ決済については、決済に関しては主にクレジットカードが使われている。これでは精算から決済に至るまで数社が絡むことになり、費用負担も大きくなり、店舗側の負担も大きくなってしまうことになる。日本でのキャッシュレス化を普及させるにはスマホ決済が鍵となりそうだが、それには店舗側の費用負担の軽減も課題となる。

 スウェーデンのスマホ決済のSWISHは携帯電話の電話番号とBank IDと呼ばれる番号を利用することにより銀行と紐づけされることによって決済が可能となる。今後の日本でのスマホ決済の普及については、この銀行との紐付けがひとつのポイントとなるのではなかろうか。ただし、銀行と紐付けされることについては、どうして日本ではデビットカードの普及が進まなかったのかということも検討課題となりそうである。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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