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北朝鮮リスクの後退で、リスク回避の巻き戻しが強まるか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 これを書いている時間に(27日午前)、韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領と北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長による南北首脳会談が、軍事境界線にあるパンムンジョム(板門店)の韓国側の施設、「平和の家」で始まった。

 会談では、非核化と平和定着を巡って集中的な議論が交わされる見通しで、史上初の米朝首脳会談を見据えて、キム委員長の非核化の意思を、共同宣言などの形でどれだけ明文化できるのかが焦点となるとされる(NHKニュース)。

 何故、北朝鮮は攻撃的な態度をあらため融和的な態度に変化してきたのか。これは極めて政治的な問題であり、ここで憶測を入れるつもりはないが、この流れから見る限り、北朝鮮側は史上初の米朝首脳会談を成功させたいと思われる。ちなみに米朝首脳会談が行われる場所についても憶測が飛んでいるが、板門店の可能性が高くなったのではなかろうか。

 それはさておき、今年に入ってからの外為市場における円高の動きは、北朝鮮の核開発やミサイルの試射を巡っての北朝鮮の地政学的リスクによるリスク回避の動きだけであったわけではない。ドルが売られ、円が買われる、それぞれの要因はいくつかあった。しかし、2月あたりからはユーロなどに対しても円が買われており、(リスク回避として)円が買われやすい地合であったことも確かではなかろうか。

 その円高の流れに変化が出てきたのは、2月の平昌での冬季オリンピックを経て、韓国と北朝鮮が首脳会談を開くことで合意したとのニュースが飛び込んできたあたりからとなっていた。ここにきてのドル円の反発には、リスク回避の巻き戻しと言った動きもあったとみられ、その意味では北朝鮮の地政学的リスクの後退も影響していたとみておかしくはない。

 もちろん米長期金利の3%台乗せなどもドルの上昇を促したが、円だけでなく米国債もリスク回避によって買われやすいものであり、つまり米長期金利の上昇もファンダメンタルや需給面だけでなく、リスク回避の巻き戻しとみれば、北朝鮮の地政学的リスクの後退による影響は皆無であったとは言い切れない。

 そうであれば、このまま史上初の米朝首脳会談がスムーズに開催され、核問題等で何かしらの成果が出るとなれば、さらに北朝鮮リスクが後退するとともに、アジア状勢に変化が生じることも考えられる。少なくともドル円が年初の水準ともなる113円台あたりまで戻してきたとしても何ら不思議ではない。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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