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2017年の債券相場を振り返る

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 2017年の債券相場を一言で表すと、「動かない」ということになりそうである。債券先物の中心限月(除くナイトセッション)でみると、年内の高値は9月8日につけた151円51銭、年内の安値は2月3日につけた149円28銭。つまり年内の債券先物の値幅は2円23銭しかなく過去最少値幅を更新した。

 また、現物の10年債利回りもマイナス0.015%から0.150%の間の動きとなって、こちらも過去最低の値幅となっていた。

 何故、動かないといえば、日銀のイールドカーブコントロールが効いているとしか言いようがない。日銀が2016年9月に決定した長短金利操作付き量的・質的金融緩和によって、金融政策のターゲットが量から金利に戻り、長期金利そのものもターゲットとなった。ターゲットはゼロ%としているものの、これまでの指し値オペなどの状況からみて、マイナス0.10%あたりからプラス0.1%あたりに置いていると推測され。10年債利回りはほぼその水準に収まっている。

 日銀により10年債利回りが抑えられたのが2月3日であり、10年債利回りが0.150%まで上昇した際に、0.110%水準での指し値オペが実施され、これによって長期金利の上値が抑えられた。また、9月には10年債利回りが一時マイナスとなったが、これは日銀というよりも市場が10年債利回りのマイナス化を高値警戒といったかたちで嫌ったような格好となった。

 FRBは3月、6月、12月のFOMCで追加利上げを決定した。しかし、物価がFRBの想定する水準に届いていないこともあり、米10年債利回りの上昇は限られた。3月に2.6%近辺に上昇したあと、9月に2%近くまで低下し、その後2.5%あたりまで戻した。

 今年はオランダの議会下院選挙やフランス大統領選などもあり、政治リスクも気にされていたが、大きなリスク要因とはならなかった。英国のEU離脱についてもいまのところそれほど大きなリスク要因とはされていない。むしろ北朝鮮や中東の地政学的リスクが意識されたが、こちらも大きく材料視されることはなかった。

 米国株式市場は上昇を続け、3指数は過去最高値を更新し続けた。日本でも雇用を主体とした景気回復もあって、日経平均は23000円近くまで上昇した。物価も前年比で1%近くまで上昇しているが、いまのところ日銀は動く姿勢をみせておらず、長期金利は日銀のターゲットのなかで推移している状況となった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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