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日銀は効果の見えないマイナス金利政策を見直すべき

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、預金の預け先である銀行が日銀に支払うマイナス金利分を負担する方針を固めた。GPIFの預金は現在みずほフィナンシャルグループ傘下の資産管理サービス信託銀行(TCSB)が預かっており、資産管理サービス信託銀行におけるGPIFの預金は2017年9月末時点で10兆円以上となり、1年前より7兆円増えた(12月18日付け日経新聞より)。

 2016年1月に導入が決まった日銀のマイナス金利政策により、準備預金の法定額を超過した一部に、年0.1%のマイナス金利が適用される。信託銀行全体でマイナス金利を適用される預金は約7兆円程度あるようだが、その多くをTCSBが占めているようである。

 これまで年金などを運用する機関投資家がマイナス金利分を負担する事例はあったようだが、ついに超大手の機関投資家ともいえるGPIFも負担せざるを得なくなったということになる。

 日銀が2016年1月の決定会合でマイナス金利政策を導入したことにより、10年債の利回りが一時マイナス0.1%に低下するなど大きく低下した。MMFやマネー・リザーブ・ファンド(MRF)の資金の導入先であるところの債券の利回りも軒並みマイナスとなり、MMFについては新規の購入申し込みを停止し、さらに運用を終了して顧客に資金を返す繰り上げ償還も実施された。同年3月の金融政策決定会合では、MRFと呼ばれる投資信託について、マイナス金利の適用から外すことを決めた。

 日銀は2016年9月の金融政策決定会合で長短金利操作付き量的・質的金融緩和を決定し、これによって長期金利つまり10年債利回りをゼロ%を少し上回るプラスに引き上げた格好ながら、中期ゾーン以下の国債利回りはいまだにマイナスとなっている。

 いったいマイナス金利政策は、どのような経路によって物価や景気に働きかけているのかは不透明というか、そもそも物価目標は達成される見込みもない。マイナス金利政策が直接、物価上昇に働きかけることを証明できるものはない。そうであるのであれば、金融機関の収益を圧迫するだけともなるマイナス金利政策は早晩、見直す必要があるのではなかろうか。株式市場や為替市場が動揺するのではとの懸念はあるかもしれないが、それでやめられないというのもおかしいし、現実には金融株などには好材料となり、株価にプラスに働く可能性すらありうる。そろそろ、マイナス金利政策の修正を提案する日銀の政策委員が出てきてもおかしくはないのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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