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FRB議長選出に向けたトランプ大統領のパフォーマンス

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 米国のトランプ大統領は24日、上院共和党の昼食会に出席し、次期FRB議長候補を巡り、上院議員に挙手投票を求めたと複数の議員が明らかにしたそうである。スコット議員は、「(トランプ大統領から)勝者の発表はなかったが、私はテイラー氏が勝利したと考えている」と述べた(ブルームバーグ)。

 これを受けて米債はさらに売り込まれ、ドルは買われたようだが、こういったやり方はあまり好ましいと思えない。ラウンズ議員は大半の議員が挙手しなかったため誰が有望か判断は難しいと語ったそうだが、それは当然であろう。いくら議会の承認が必要といえど、FRB議長の指名も議会が行うのであれば挙手する必要があろうが、今回については大統領のパフォーマンスとしか思えない。ただし、FRB議長の承認は議会が行うことで、ニュアンスを探ろうとしたのかもしれないが。

 コーカー議員も手を挙げなかったそうで、その理由として「FRB議長を選ぶ極めて優れた方法だとは思わないため、私は参加を断った」と話した。もしもトランプ大統領がいまだFRB議長を決めきれず、承認に必要となる共和党議員の反応を聞きたかったのであれば、このような妙な手段ではなく、共和党の有力者に直接ヒアリングすべきであろう。

 まもなく大統領による次期FRB議長の指名が行われると思われる。今回の昼食会でのアトラクションは、共和党議員がイエレン議長の再任は望んでいないことを確認したかったのであったとしても、これに対し米国で大統領に次いで影響力のあるといわれるFRB議長の指名人事を控えて、大きな権限を持っている大統領がすべき行為ではないのではなかろうか。もしかするとそれだけ大統領も悩んでいるということなのかもしれないが。

 ちなみに来年4月に黒田日銀総裁は任期満了を迎える。こちらの指名人事は最終的には首相官邸が握っている。もちろん議会での承認が必要ではあるが、いまの日本では与党が過半数を握っており、さらに官邸が出した人事案を反対する与党議員はいないと思われる。もし安倍首相が与党議員に誰が適任かと昼食を取りながら挙手投票を求めても、与党議員はただ困惑するだけとなるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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