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北朝鮮の弾道ミサイルが日本上空通過、金融市場はどう反応したのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

 29日の朝6時過ぎ、いつものようにNHKラジオのニュースを聞いていたところ、近くにあったスマートフォン2台が大きな警告音を発した。画面を確認したところ、下記のような表示が出ていた。

「緊急速報 政府からの発表 2017/08/29 06:02 ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射された模様です。頑丈な建物や地下に非難してください。(総務省消防庁)」

 そのあと6時14分にあらためて、この地域の上空をミサイルが通過した模様です。との緊急速報が流れた。

 6時2分の携帯電話へのJアラートに続いて、防災無線でも同様の放送が流れた。テレビで確認したところ、Jアラートが鳴ったのは北関東3県と東北、北海道であった。

 最初のアラートの表示では、日本の国土に向けてミサイルを撃ったようにも解釈できることで、さてどうしようとなったが、とりあえず家の外に出ないようにして続報を待つしかなかった。我が家には地下室もなければ防空壕もない。

 今回の北朝鮮のミサイル発射の分析は専門家が行うであろうが、その方角や時間帯から、日本の本土上空をなるべく避け、さらに航空機が密集している地域も避けたのではとの見方があった。やや方向が違うがハワイ方面を視野に入れて、飛距離を試した可能性がある。いずれにしても許されざる行為である。

 これを受けて29日の金融市場は反応した。26日に北朝鮮が日本海に向け短距離の飛翔体を発射した際には、28日の東京市場はこれを全く無視した格好となっていた。しかし、さすがに日本上空を通過となると、無視できず金融市場ではリスク回避の動きを強めた。

 日本が脅威に晒されているにもかかわらず、リスク回避によって何故、円が買われるのか。いろいろな解釈もあろうが、個人的にはこれまでの世界的リスクに反応した際に、円やスイスフランが買われていたことにより、条件反射的な動きとみている。これがリスクや懸念ではなく、日本が被害を直接受けるようなことになれば素直に円買いとはいかなくなるのではなかろうか。

 円高にも反応しての株安は素直に下げたものの、その下げ幅は限定的となった。日本国債も多少なり買われたが、これも円と同様にリスク回避と言えば安全資産としての国債買いの連想が働いたものであろう。日本そのものに対する危機が生じれば、この動きについても疑問符がともる。それ以前にマーケットが開いているのかという問題も生じよう。

 今回、当初のJアラートを聞いて、どこにミサイルが着弾するのかという情報がすぐには来なかったため、戦争への恐怖を覚えたことも確かである。防災無線の警告音は、昔の空襲警報がこうであったのかと連想してしまった。今回の北朝鮮によるミサイル発射は、日本に対して直接的な被害はなかったものの、有事が意外に迫っているのではとの恐怖感も覚えた。

 29日の金融市場もいつも通り開き、一部の電車は遅れていたものの、通勤もいつも通り。そのいつもどおりの生活が脅かされぬよう、何かあっても、円が買われ、日本国債も買われる程度のリスクに収まってもらうよう、祈るしかないのであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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