Yahoo!ニュース

FRBの正常化に向けたロードマップに変更なしか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

 ニューヨーク連銀のダドリー総裁は14日にAP通信とのインタビューで、FRBが9月にバランスシート縮小を開始するとの見通しは不合理ではなく、経済指標が持ちこたえれば年内あと1回の利上げがある、との見方を示した(ロイター)。

 7月26日のFOMCの声明文では、4兆5000億ドル規模のバランスシートの規模縮小について、前回の「年内に着手する」としていたものが、「比較的早く開始する」に修正されていた。これにより次回9月のFOMCにおいてバランスシート縮小を決定するとの見方が強まっていた。それを今回のダドリー発言が裏付けた格好となる。

 バランスシートの規模縮小の手段としては、満期を迎えた債券への再投資を減らすことで資産を縮小するかたちとなる。開始時の資産圧縮規模は米国債が月60億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)などは月40億ドルを上限とし、3か月ごとに上限を引き上げて、1年後には米国債が月300億ドル、MBSなどは月200億ドルとする。そして、今回ダドリー総裁はFRBのバランスシートの規模について、5年後には2兆5000億~3兆5000億ドルに縮小するとの見通しも示した。

 市場ではすでに9月のFOMCでのバランスシートの規模縮小決定は相当程度織り込んでいる。しかし、年内もう一回の利上げが可能かどうかについては見方が分かれ、発表される経済指標によってその予測の度合いも変化している。

 今回、ダドリー総裁は、「経済見通しがどのように推移するかによる」とし、経済が自身の予想通りに進展するなら「年内あと1回の利上げ実施を支持する」とした(ロイター)。

 7月11日の半期に一度行われる米下院金融委員会の公聴会で、イエレン議長は「FOMCは向こう数か月、インフレの動向を注視していく」と指摘した。イエレン議長は物価動向に注視しているのに対し、ダドリー総裁は経済の今後の動向を注視するとしており、物価面だけでないことを示した。

 いずれにしても物価がこのまま低迷し続け、予想を下回る経済指標が多く出るようなことになると利上げを急ぐ必要はない。しかし、余程の落ち込みがなければ利上げを検討する可能性が高いとみておく必要があろう。

 一昨年と昨年の利上げは1回に止まったが、今年はそれが3回の予定となり、FRBのロードマップでは来年と再来年も3回の予定となっているようである。いまのところはそれを修正するつもりはないようで、このあたりについては今月のジャクソンホールの会合でもさらに明らかにされるのではないかと思われる。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

牛さん熊さんの本日の債券

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月20回程度(不定期)

「牛さん熊さんの本日の債券」では毎営業日の朝と引け後に、当日の債券市場を中心とした金融市場の動きを牛さんと熊さんの会話形式にてお伝えします。昼には金融に絡んだコラムも配信します。国債を中心とした債券のこと、日銀の動きなど、市場関係者のみならず、個人投資家の方、金融に関心ある一般の方からも、さらっと読めてしっかりわかるとの評判をいただいております。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

久保田博幸の最近の記事