イベントリスクは後退したが、米株の動きにやや懸念も
6月8日の英国の総選挙では、メイ首相の保守党が議席数を減らし過半数割れとなり、ここで打って出て政権基盤を固めようとのもくろみは崩れ去った。メイ首相は北アイルランドの民主統一党との連携によって政権維持を模索するようである。メイ首相の求心力は弱まったことで、今後のEUとの離脱交渉の行方に影響を与える可能性がある。これを受けて外為市場ではポンドが下落したが、ポンド安で9日ロンドン株式市場は上昇するなど市場への影響は限られたものとなっている。
8日のECB理事会では政策金利の据え置き、量的緩和プログラムの現状維持を決定した。政策に関する声明では、追加利下げに関する文言を削除し、追加緩和に前向きの姿勢から中立姿勢に修正した。ただし、基調的インフレの指標は引き続き弱い状態にとどまっていると慎重姿勢は維持しており、大規模な刺激策を維持すると表明している。これについても想定の範囲内となった。
8日のコミー前FBI長官の議会証言の内容は、前日公表の草稿と大きく変わらず、こちらも市場への影響は限られたものとなった。これでトランプ政権への疑惑が晴れたわけではないものの、新たな事実が発覚したわけではなく、これも市場にとってはサプライズ要因とはならなかった。
11日のフランス議会下院の1回目の選挙ではマクロン新党が大勝する見通しとなり、イタリアの地方選挙で反ユーロを掲げる政党、五つ星運動が劣勢となるなどしたことで、ユーロの結束が強まることが予想され、こちらもユーロのリスクが後退した格好となった。
今週13、14日のFOMCもイベントリスクとなろうが、こちらはほぼ利上げは織り込まれていることで、むしろ利上げ見送りがサプライズとなろう。市場では今後乗り上げのペースとバランスシート縮小の工程表などを注目している。
14,15日にはイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)が予定されている。総選挙の結果を受けての市場の動揺は、ポンド安はさておき、株高等をみても限定的なものとなった。ただし、メイ首相の求心力の低下により、今後の景気などにも影響を与える懸念もあり、こちらはやや不透明感が増したように思える。このためイングランド銀行は、正常化は先送りさせ、現在のスタンスを継続するものとみられる。
15、16日には日銀の金融政策決定会合が予定されている。こちらは動きそうもない。総裁会見では出口に向けた質問も出そうだが、総裁のスタンスも変化なしか。
ということでイベントリスクは後退し、9日の米国株式市場ではダウ平均は89ドル高となり、1週間ぶりの最高値更新となったが、ナスダックは113ポイント安となっていた。ここにきての米株の上昇を牽引してきたアップルやマイクロソフトやインテルなどのIT関連株の株価が大きく下落した。むろん最高値を更新してきたことで、利益確定売りが入ることは当然ともいえるが、それでもこの下げ方はやや気になるところでもある。12日もハイテク株は売られ、ナスダックは続落となった。
もしこれでナスダックが調整局面を迎えるとなれば、米株全体に影響を及ぼしかねず、ドルの下落など伴えば、東京株式市場への影響も免れない。ナスダックが一時的な調整なのかどうかも確認する必要がありそうである。