フランス、ドイツ、イタリアで選挙ラッシュ、欧州の政治の行方にも注目
ドイツのメルケル(首相は28日、ミュンヘンでの選挙集会で、「われわれが他国を完全に頼りにできた時代は終わりつつある。私はそれをこの数日間で経験した」。「自らの運命のため闘わなければならない」と主張した。
つまりこれは英国の欧州連合(EU)離脱や米国でのトランプ大統領の就任によって、欧ユーロ圏と米英に亀裂が生じつつあり、米英との友好関係維持に努める一方で、フランスなどとの関係強化を図る必要性を訴えた。
そのフランスでは、7月に議会下院の選挙が行われる。マクロン大統領は無党派で出馬しており、結成した新政党は議席を持っていない。今回の選挙でマクロン大統領が率いる新政党「共和国前進(REM)」がいきなり政策実行のため過半数を確保できるのかが焦点となっている。
そして9月にはドイツでも総選挙が実施される。5月14日の国内最大の人口を抱えるノルトライン・ウェストファーレン州の議会選挙ではメルケル首相率いる保守系政党のキリスト教民主同盟が、州議会与党である社会民主党(SPD)を抑えて勝利した。この流れにより9月の連邦議会(下院)選挙に向けてメルケル首相率いるキリスト教民主同盟が勢いづくのかが注目される。この選挙の結果次第でメルケル政権の基盤強化に止まらず、フランスのマクロン政権との関係強化によるユーロそのものの基盤強化が図られよう。
このドイツの選挙を睨んでイタリアにも動きが出ているようである。昨年、12月のイタリアの改憲を問う国民投票で大敗したレンツィ首相は辞任し、次期首相にジェンティローニ外相が指名された。今回のイタリアでのG7サミットの議長を務めたのきこのジェンティローニ首相であった。
辞任したレンツィ前首相は最近のインタビューで、ドイツの選挙制度採用に向けた合意は可能と発言し、連立政権につながる可能性を指摘。総選挙はドイツと同時期の9月下旬の実施が妥当との見解を示した。イタリアの総選挙は2018年5月までに行われる予定だが、マッタレッラ大統領が選挙前倒しを求める権限を有しており、秋の総選挙の可能性はある。
ただし、ドイツと同時期の選挙実施の可能性が出てきたことを受けて、29日の欧州市場ではイタリアの株や国債が下落している。選挙では主要4政党が混戦模様となり、連立協議も難航が予想されることで政治の先行き不透明感も意識されたようである。
いずれにしても7月のフランス下院選挙、9月のドイツの総選挙と同時期の可能性が出てきたイタリアの総選挙の行方も今後の欧州の政治の行方を見定める上で重要なポイントとなりそうである。