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FRBは年内にもバランスシート縮小開始か

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

FRBが5日に公表した3月14、15日開催のFOMC議事要旨には下記のような表現があった。

「経済が想定通りに推移するとの前提に立って、大半の参加者はフェデラルファンド金利の緩やかな上昇が続くと見込んでおり、FOMCの再投資に関する政策の変更は年内にも適切になると判断した」(ロイター)。

これはつまり、経済物価動向がFOMCメンバーが想定したように順調に回復するという前提のもと、今後も緩やかな利上げペースが想定されるなか、年内にも量的緩和政策による米国債やMBSの買入で膨らんだ4兆5000億ドル(約500兆円)ものFRBのバランスシートの縮小政策に踏み切る可能性を示唆したものとなる。

すでに正常化に歩み始めているFRBではあったが、こと「量」については2013年12月から2014年10月にかけてテーパリングを行い、新規の買入は停止したものの、テーパリング終了時のバランスシートの規模を維持させていたのである。

株式や為替などと異なり、債券には償還がある。つまりFRBの保有する米国債が償還を迎えると、その分バランスシートの規模が縮小することとなる。このためFRBは償還分を米国債など新規購入することでバランスシートの規模を維持させ続けていたのである。

個人的にはテーパリングを波乱なく無事終了させたのであれば、利上げと同時に償還分の手当など行わず自然体でのバランスシート規模の縮小を行っても良かったのではないかと思っていた。しかし、この点についてはかなりFRBは慎重になっていた。今回のFOMC議事要旨でこのような表現を組み入れたのも、市場の波乱なくバランスシート縮小開始を織り込ませようとしたものと思われる。またFOMCでは下記のような表現もあった。

「多くの参加者は、バランスシートの規模縮小は受動的かつ予測可能な方法で実施されるべきだと強調した」

どのような形式で再投資を止めるのか。段階的なのか、それともどこかで再投資をすべてストップするのかといったことを、事前に市場に何らかのかたちで伝えることを想定しているようである。

再投資を止めることによるFRBのバランスシート縮小ですら、これだけ神経を使っているため、とてもではないが米国債やMBSの「売りオペ」で残高を減らすなどということはまず不可能に近いといえる。以前にはFRBのバランスシート縮小など売りオペを使えば簡単にできるとの意見もあったが、現実には難しいといえよう。増やすのは簡単でも減らすのは極端に難しい作業ということであり、いまだバランスシート規模を増やし続けている某中央銀行は大丈夫であろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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