今週、日欧米の中央銀行はどう動くのか
「今週、日欧米の中央銀行はどう動くか」というタイトルにはしたものの、31日から11月1日にかけて開催される日銀金融政策決定会合、1日から2日のFOMC、2日から3日のイングランド銀行の金融政策委員会(MPC)では、金融政策はそれぞれ現状維持が予想されている。つまり動く気配はいまのところない。
31日から11月1日の日銀金融政策決定会合では、9月の会合で決定した「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」と名付けられた金融政策の新しい枠組みの導入の効果を見定めたいとして、現状維持を決定するとみられる。
ただし、同時に公表される経済・物価情勢の展望(展望レポート)では、物価の見通しの下方修正が予想されている。このため、物価目標の達成時期について「2017年度中」から「2018年度以降」に先送りされるとみられている。それでも追加緩和期待が強まるようなことは考えづらい。日銀と市場との対話がうまくいっているというよりも、追加緩和の意味やその効果について市場参加者も疑問を抱くようになっているためと思われる。
1日から2日にかけてのFOMCも金融政策は現状維持が予想されている。市場では9月のFOMC時に比べて追加緩和期待が強まっている。しかし大統領選挙前でもあり、議長会見もない今回のFOMCでの利上げ決定の可能性は薄い。市場参加者の多くは12月のFOMCでの利上げを予想している。
ところが、ここにきて大統領選挙のクリントン候補が、国務長官時代に私的な電子メール・サーバーを使っていた問題が再燃するなど、あと一週間ちょっとに迫った大統領選挙に不透明要素が加わってきた。それでもクリントン氏優位に変わりはないと思われるが、FRBとしても大統領選挙の結果を確認してから利上げを検討したいのではなかろうか。
そして、2日から3日にかけて開催されるイングランド銀行のMPCであるが、こちらも金融政策の現状維持が予想されている。英国のEU離脱による影響も危惧されていたが、先日発表された英国の7~9月GDPは前期比プラス0.5%と予想を上回る伸びとなるなど、景気への影響は限定的であった。これに加えてポンド安に伴う物価の上昇もあり、イングランド銀行の追加緩和観測は急速に後退した。
むしろイングランド銀行で注目されつつあるのが、カーニー総裁の去就となっていた。カーニー総裁はこれまで、就任当初の計画である2018年に退任するか、総裁として通常の8年間の任期を全うして2021年まで在任するか、年末までに決定すると述べてきた。
そして31日、カーニー総裁がイギリスのハモンド財務相に宛てた書簡の中で、再来年6月までとなっていたみずからの任期を1年延長して、2019年6月まで総裁を務める考えを明らかにし、財務相もこれを了承したと、イングランド銀行が発表した(NHK)。
カーニー総裁は同氏をカナダから招聘したオズボーン前財務相との関係が緊密で、メイ現政権とは距離がある。そのメイ首相は低金利など金融緩和策には「悪い副作用がある」と批判するなど、現在のイングランド銀行の金融政策に不満を抱いている。このためカーニー氏が2018年に退任するのではとの観測もあった。それはなかったものの、総裁として通常の8年間の任期を全うして2021年まで在任するかどうかまでははっきりしてはいない。
今後イングランド銀行が物価の動向など考慮して、金融政策の舵取りの方向を変える可能性はないわけではない。その意味ではメイ首相の意向に沿った方向に向かうこともありうる。なかなか難しい立場にあるカーニー総裁が、今週のMPC後の会見で今後の金融政策に対して、どのような認識を示すのかも注目したい。