イエレン議長による「高圧経済」発言の意図とは

(写真:ロイター/アフロ)

FRBのイエレン議長は10月14日の講演で、経済危機による損失の修復を図るには「高圧経済(high-pressure economy)」政策が唯一の方策となり得る、との考えを示した。力強い総需要と労働市場のひっ迫を伴う高圧経済が一時的に続くことで、経済損失を埋め合わせるための様々な手段が見い出せると語ったそうである(ロイター)。

中央銀行の金融緩和策を継続させることで、強い需要と雇用の改善により、景気のさらなる改善を図るのが、ハイプレッシャーエコノミーということになろう。ただし、これを続けることによりインフレへの懸念が強まることも確かである。

これについてフィッシャー副議長は17日に、失業率を押し下げ続ける戦略の追求には限界があると指摘し、「高圧経済」のリスクを警告した。フィッシャー副議長は「われわれの誤りがインフレ率によってはっきりするまで続けるべきだと主張すれば、変更は手遅れになろう」と指摘した(ブルームバーグ)。

FRBは9月のFOMCで金融政策は賛成多数で現状維持とし、利上げを先送りした。事前にイエレン議長、フィッシャー副議長、ダドリー・ニューヨーク連銀総裁からは早期利上げを示唆するような発言もあったが、発表された経済指標が予想を下回るなどしたことで市場での利上げ観測は強まらなかった。結果としては市場の予想通りに、利上げは見送られた格好となった。

ところがその後発表された経済指標は景気の改善を示すものも出ており、少なくとも年内の利上げの可能性はありうるとして、市場では12月のFOMCでの利上げ観測が強まりはじめた。その矢先に今回のイエレン議長の発言があった。

イエレン議長の「高圧経済」発言の背景として、12月の利上げ観測を後退させる意図があったのではとの見方も出ていたようである。しかし、これはむしろ9月に利上げをしなかったことの理由を説明したとの見方もできるのではなかろうか。利上げの先送りで景気の圧力鍋をさらに沸騰させても、そう簡単にはインフレとはならない。むしろ雇用環境もさらに改善させることも可能との認識を伝えたかったのかもしれない。

しかし、市場はこれで12月の利上げも困難かと取ってしまったことで、あらためてフッシャー副議長が「高圧経済」のリスクを警告することで、12月の利上げの可能性を維持させようとしたのかもしれない。

いずれにしても突然出てきた「高圧経済」という用語を使った背景には、何かしらのFRBの意図が隠されているように思われる。それが12月のFOMCでの金融政策の変更の可能性を意識したものなのかどうか。今後のイエレン議長やフィッシャー副議長の発言内容にも注意したい。

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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