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米国利上げはいつ以来となるのか

久保田博幸金融アナリスト
(写真:ロイター/アフロ)

米国では12月のFOMCでの利上げの可能性が高まっているが、果たして米国の利上げはいつ以来となるのであろうか。

米国の政策金利であるフェデラル・ファンド金利を確認してみると、2008年12月から0.25%となって現在まで続いており、ここから実質的なゼロ金利政策が始まっている。

2008年9月に証券化商品により大きな損失を抱えていた投資銀行のリーマン・ブラザーズが資本調達にも身売りにも失敗し、経営不安に陥り破綻したことでリーマンショックが発生した。そもそもこれはサブプライムローン問題が発端となっていたが、これをきっかけに世界的な金融経済危機が発生し、そのためFRBは政策金利を実質的にゼロ%にし、今後の政策の焦点はFRBのバランスシートの規模を高水準に維持する手段を通じて、金融市場の機能を支え景気を刺激することに置くとして、量的緩和政策の導入を示唆した。2009年3月にFRBは最大3000億ドルの長期国債購入を決定し、量的緩和政策がスタートする。その量的緩和政策はテーパリングの実施によって2014年10月に終了した。

2008年9月に実質的なゼロ金利政策を決定するまで、FRBは数度に渡る利下げを実施していたが、最後の利上げは2006年となる。2006年といえば日銀が前回の量的緩和政策の解除(3月)とゼロ金利政策の解除(7月)を行った年である。2006年6月29日にFRBは政策金利を0.25%利上げ5.25%とした。これが直近で最後の利上げとなった。

もし来月のFOMCで利上げが決定されるとなれば、2006年6月以来となる。実質的なゼロ金利政策の解除となれば、2008年12月以来となることになる。FRBが量的緩和政策の解除、つまりテーパリングに対してかなり慎重に実施したように、それ以上に利上げに関しても慎重になっていたのは、まさにこの長期にわたるゼロ金利の期間と、長らく利下げしか経験のなかった市場に配慮したためと言える。

ただし、この利上げは正常化とも言われているように、世界的な金融経済危機から脱してきたことを象徴するものとなる。有事から平時に戻ってきた以上、その副作用も考慮するといつまでも鎮静剤を打ち続けることはむしろ危険となる。大きく膨らませすぎた中央銀行のバランスシートも時間を掛けて戻す必要もある。今回の利上げはいずれ利下げをするための、のりしろ作りとの見方もあるが、イエレン議長がそのような発想で利上げを目指しているとは考えづらい。危機に慣らされすぎてしまった発想から脱しなければ、いまのFRBの動きは読みづらくなるのではないかと思う。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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