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米利上げが12月と予想する根拠

久保田博幸金融アナリスト
(提供:U.S. Federal Reserve/ロイター/アフロ)

FRBの利上げについては、9月16~17日か12月15~16日のいずれかのFOMCで決定されるとの見方が大勢となっている。ここにきてアトランタ連銀のロックハート総裁が米経済は9年ぶりとなる短期金利の引き上げに向け用意が整っていると発言したことで、9月利上げとの見方が強くなっているように思われる。念のため、10月27~28日にもFOMCが開かれることで10月の可能性もないことはないが、議長会見がある9月か12月の可能性が高いと市場参加者はみている。

2013年のテーパリング開始の決定時期を巡っても当初は9月説が強まっていたが、結局、決定は12月となった。相場変動の押さえ込みに成功したテーパリングの成功事例も意識して9月ではなく12月にFRBは利上げをすると個人的には見込んでる。そして、ここにあらたに12月説を強めさせる出来事や、それを裏付けるかのような発言がFRB関係者から出てきた。  

その出来事とは、中国の輸出や物価の低迷受けて中国人民銀行が1993年以来とされる約2%もの事実上の人民元切り下げを実施したことである。ここまでする必要があるほどに中国経済の減速や物価下落が懸念されたと言えることで、世界経済への影響も見極める必要が出てきた。

発言に関しては、FRBのフィッシャー副議長によるブルームバーグテレビジョンのインタビューでのコメントである。フィッシャー副議長は「問題はデュアルマンデートのうちの雇用ではない。雇用は順調だ」とした。さらに「問題なのはインフレの方だ」と指摘した。ただし「現在のインフレの大部分は一時的なものだ」とも述べている。

このあたり日銀の黒田総裁の説明と似た部分がある。原油価格下落による影響により、低インフレをめぐる懸念が強まっているものの、原油安の影響は年後半に向けて次第に弱まり、物価の基調の強さからいずれ物価目標に向かって物価は上昇するとの認識のようである。

このフィッシャー副議長の発言は、FRBが利上げ実施に向けて、物価が目標に向かって上昇し始める兆候を待つ可能性があることを示しているのではないか。その徴候があと1か月で確認することは難しい。原油価格はここにきて一時WTIで42ドル台まで下落していたぐらいである。

12月のFOMCまでにその兆候が掴めるかどうかも不透明ではあるが、それでも多少なり物価の基調の上向きが確認できれば、12月のFOMCでの利上げの可能性は高いのではなかろうか。特に今回は執行部というか影響力の大きいフィッシャー副議長の発言だけに注意する必要がある。

ロックハート総裁などが利上げに向けた前傾姿勢を示すことで、市場に利上げそのものの可能性を織り込ませ、大きな相場変動を事前に抑えるとともに、その時期については9月と特定させず、12月の可能性も市場に意識させるなど、絶妙な格好での市場との対話をFRBは行っている。

このあたり、FRBは目標に対してのフレキシブルなアナログ型の政策のため、柔軟な対応が可能になっている。これに対して2年とか2%という数字を前面に押し出してしまった日銀の異次元緩和はデジタル型となってしまっている分、市場との対話を難しくさせてしまった側面もある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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