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都銀は1年ぶりに債券を買い越しに

久保田博幸金融アナリスト
(写真:アフロ)

日本証券業協会(JSDA)は7月21日に6月の公社債投資家別売買高を公表した。これは日本証券業協会の協会員、つまり証券会社から、当月中に取り扱った公社債の一般売買分(現先を除き、国債の発行日前取引を含む)の状況についての報告を基に集計したものである。

6月に都銀は131億円の買い越しとなった。都銀の買い越しは2014年6月以来、1年ぶりとなる。国債投資家別売買高でみると超長期債を1464億円、長期債を796億円買い越し、中期債を1891億円売り越している。

信託銀行も5月に続いて6月も買い越しとなった。7661億円の買い越しで、国債投資家別売買高でみると超長期債を3382億円、長期債を2597億円、中期債を251億円それぞれ買い越しとなった。年金による国債ポジションの圧縮は一服し、むしろ買い戻しているような動きとなっていた。

農林系金融機関は4844億円の買い越し。こちらも超長期債、長期債主体に万遍なく買い越しとなった。信金は2503億円の買い越し。その他金融機関も2460億円の買い越し。生損保は超長期債主体に4241億円の買い越し。

外国人は4385億円の買い越し。こちらは12か月連続の買い越しとなった。中期債を7251億円買い越した。ギリシャへの懸念の強まりにより、逃避的な日本国債への海外投資家からの買いが中短期主体に入っていたものと思われる。

これに対して地銀が4757億円の売り越しとなった。長期債を3607億円、超長期債を1378億円売り越していた。また、「その他」も5605億円の売り越しに。中期債を5217億円、超長期債を3891億円、長期債を1107億円それぞれ売り越し。「その他」のなかで具体的にどの金融機関が売り越していたのかはわからない。参考までにゆうちょ銀行などは「その他」に入っている。

6月の債券相場を振り返ってみると、当初は米国やドイツの長期金利の上昇を背景に日本国債も売られ、10年債利回りは0.5%台に乗せた。FRBの年内利上げ観測や、5月のユーロ圏CPIが前年比プラスとなったことなども影響か。ドイツの10年債利回りは一時1%台に。18日のユーロ圏財務相会合ではギリシャ支援をめぐる合意は得られず、22日に臨時のユーロ圏首脳会議を開くことを決めたが、ギリシャへの懸念が再び強まってきた。債券先物は再び147円台を回復。ギリシャへの支援協議が暗礁に乗りかけ、債券先物は147円近辺での動きとなった。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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