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FRBの正常化時期はいつなのか

久保田博幸金融アナリスト

4月8日に公表された3月17~18日開催のFOMC議事要旨において、正常化の時期に関する議論において下記の既述があった。

Several participants judged that the economic data and outlook were likely to warrant beginning normalization at the June meeting. However, others anticipated that the effects of energy price declines and the dollar's appreciation would continue to weigh on inflation in the near term, suggesting that conditions likely would not be appropriate to begin raising rates until later in the year, and a couple of participants suggested that the economic outlook likely would not call for liftoff until 2016.

何人か(2~3人か)の会合参加者は、経済データや見通しからみて、6月の会合で正常化(つまり利上げ)を開始することが妥当であろうと指摘していた。しかしながら、他の参加者は、原油価格の下落による影響やドル高による物価低迷が長引く状況を考慮すれば、今年の後半になるまで金利の引き上げは待つべき、との意見のようである。さらに2人の委員は利上げが適切となる経済情勢は2016年まで訪れない公算が大きいとの認識のようであった。

イエレン議長は3月27日の講演で、経済成長の継続を前提に、今年後半に利上げが妥当になるだろうと表明していた。現在のFOMCの多数派は、金融政策の正常化、つまり利上げに関しては今年後半との認識を強めているようである。

3日に発表された3月の米雇用統計では非農業雇用者数が予想を大きく下回ったが、これについてニューヨーク連銀のダドリー総裁は、この数字を含めて経済に現在みられる弱さは主に一時的な状況によるものだと指摘していた。初回利上げのタイミングについては、データ次第であり、将来の経済動向が完全には予想できないため、依然見極めにくいとの発言もあった。ロイターのインタビューに対し、ダドリー総裁は大方の見方よりも早めに利上げに踏み切り、その後は慎重に対応する可能性があるとの発言もあった反面、利上げは早過ぎるよりも遅過ぎる方がよいと考える理由はなお存在しているとも述べていた。

フィッシャー副議長は少し前ではあるが2月27日に、経済情勢によっては別の時期が妥当かもしれないと断った上で、利上げは6月か9月になる可能性が最も高いと述べた。

パウエル理事は早ければ6月の利上げ開始も選択肢として残しておくべきだと述べている。

今年のFOMCで議決権を持っているリッチモンド連銀のラッカー総裁は、政策金利を6月に引き上げるべきだとの認識を示していた。

アトランタ連銀のロックハート総裁は6月ではなく、7月か9月に傾くだろうと語っている。

シカゴ連銀のエバンス総裁は2016年まで利上げ待つべきとの考えを示している。

サンフランシスコ連銀のウィリアムズ総裁は、利上げを開始する時期が近づいているとの認識を示し、FRBが後手に回るリスクを警告している。

6月の会合での利上げの可能性を指摘したのは、このラッカー総裁とウィリアムズ総裁あたりではないかと予想される。パウエル理事の可能性もあるが、イエレン議長を中心の多数派にとりあえず入っている可能性が高いと思われる。

これに対して2016年まで待つ必要性を唱えたのはエバンス総裁と、もしかするとダドリー総裁あたりなのか。

果たして9月が年後半に含まれるのか。later in the yearとなると、10月か12月のFOMCを意識しているかにも思える。このFOMCの議事要旨を見る限り、6月の会合での正常化の可能性はやや後退した感がある。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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