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LIFFEでの日本国債先物取引の終了

久保田博幸金融アナリスト

9月16日に大阪取引所はLIFFEにおいて、長期国債先物取引及び東証株価指数(TOPIX)先物取引が廃止されることに伴い、当社とLIFFEとの間の移管取引を終了するとり通知を出していた。

10月1日よりLIFFEの長期国債先物の値段表示がなされなくなり、この日から日本の長期国債先物の取引は廃止されたようである。またひとつ、債券市場の伝統あるものが密かに消えていった。

ロンドン国際金融先物取引所、通称LIFFE(ライフと呼ぶ)に日本の長期国債先物が上場したのは、1987年7月のことであった。日本で初めての金融先物取引である長期国債先物が東証に上昇したのが1985年10月であった。それから2年足らずでLIFFEにも上場したのである。

1985年には銀行の国債のフルディーリングの認可もあり、債券市場は先物上場と相まって活況を呈することとなった。債券のディーリング時代を迎えたのである。

東証の国債先物は株式市場と同様に15時で引けていた。このため、そのあとの時間帯で何かしらの出来事があった際には、先物を使ってのヘッジ等はできなかった。その時間帯の一部を埋めたのが、LIFFEの国債先物取引であった。当初は東証との相互決済はできなかったものの、ヘッジとして利用されることも多かった。

それ以上に、海外の時間帯での、日本国債の価格の動きを知る大きな指標となっていたのである。当時の朝は、ディーリングルームの席に着くと、まずチェックしたのが欧米の株や債券、為替の動向と、LIFFEの国債先物の価格動向であった。これをもとに当日の債券先物の寄り付きの居所を探ったのである。

2000年9月に東証で債券先物とオプションのイブニングセッションが開始された。ただし、東京時間の15時半から18時までの取引であり、18時以降についてはLIFFEの値動きを参考にしていた。

2011年11月21日からはイブニングセッションの終了時間が18時から23時30分まで延長された。このあたりから、LIFFEよりもイブニングセッションの活用も増えたとみられ、次第にLIFFEの引けよりもイブニングセッションの引けを意識するようになっていた。

2014年3月24日から、国債先物のイブニングセッション取引の終了時間は、11時半から、翌日午前3時に変更され、これが決定打となった。国債先物の取引は東証から大阪取引所に移された。

イブニングセッションが午前3時まで行われることより、LIFFEでの国債先物は細り、イブニングセッションの引けが重視されるようになった。LIFFEとの間の相互決済はあったが、当然ながら市場参加者にとってイブニングを使ったほうが使い勝手は良い。このため、LIFFEでの日本の国債先物とTOPIX先物取引は上場廃止となったものと思われる。

1985年に東証に上場された日本の国債先物は、一時売買高では世界有数のデリバティブ取引となっていた。しかし、海外市場での取引はシンガポールなどでも上場していたが、主にこのLIFFEが頑張っていた。しかし、そのLIFFEでの取引もなくなった。非常に寂しい限りではあるが、これも時代の流れということであろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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