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6月に都銀は債券を買い越し、地銀は利食い売りか

久保田博幸金融アナリスト

7月22日に日本証券業協会が発表した6月の公社債投資家別売買高(除く短期債)によると、都銀は3995億円の買い越しとなった。5月の4100億円の買い越しに続き、2か月連続での買い越しとなっていた。国債投資家別売買高をみると5月は主に中期債主体の買い越しとなっていたが、6月は長期債が2011億円、中期債が1440億円の買い越しとなっており、やや期間の長い国債を買い越した格好となった。

これに対して地銀は1531億円の売り越しとなっていた。国債投資家別売買高によると長期債を5585億円売り越していた。地銀は4月に長期債を8125億円買い越していたが、相場は4月以降、ジリ高傾向となっており、この利食い売りを入れた格好か。

信託銀行は1兆871億円の買い越しとなり、業態別では最大の買い越しとなった。中期債を9626億円買い越した。信金は6919億円の買い越し。こちらは長期債主体の買い越し。生損保は7680億円の買い越し。超長期債主体に買い越していた。投資信託は6385億円の買い越し。こちらは中期債主体の買い越しとなっていた。

外国人は715億円の売り越し。超長期債を買い越していたが、それ以上に長期債を売り越していた。

債券相場は6月も上昇相場が続いていた。6月5日のECB政策理事会で、利下げなどを含むパッケージの追加緩和策を決定し、この影響もあった。10年債利回りは0.6%近辺からさらに水準を切り下げてきた。日中値幅は限られ値動きそのものは小さかったが、水準は少しずつ切り上げ(利回りは切り下げ)られてきた。

今回の投資家別売買状況をみても、現物債は売り手もいるが、それ以上に各年限で買い手が存在している。さらに日銀による国債買入もあるため、好需給が継続していると言える。

7月に入り債券相場はさらに上昇し、18日には10年債利回りは一時0.510%まで低下した。すぐに利食い売りに押され0.540%あたりに後退したものの、いまのところ戻り売りも限定的なものとなっている。さすがに10年債の0.5%近くでは高値警戒感も強く、ここがいったん天井となる可能性もある。いまのところ需給バランスが大きく崩れることも考えづらいが、何かしらのきっかけで相場が動くこともありうるため注意したい。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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